イーサリアム現物ETF、「S-1」書類から読み解く

暗号資産(仮想通貨)ファン、ETF(上場投資信託)ファン、あるいは両方のファンにとって、イーサリアム現物ETFのローンチの可能性は、今年初めのビットコイン現物ETFのローンチから始まった興奮に拍車をかけている。

承認の可能性が近づくにつれて、「19b-4」や「S-1」などの特定の書類とその重要性が議論されている。その内容の多くは米証券取引委員会(SEC)提出書類に標準的なものだが、法律用語に紛れて、いくつかの重要なポイントが隠されている。S-1書類や業界データをもとに、イーサリアム現物ETFについてこれまでに分かっていることを整理していこう。

「19b-4」「S-1」書類とは?

いわゆる「19b-4」書類は、取引所(ニューヨーク証券取引所やナスダックなど)がルール変更案をSECに通知するために提出するもの。新しいタイプのETFを上場させるために必要だ。

ETF発行予定者は5月20日頃に「19b-4」の修正を求められ、その際、ほとんどの発行者がステーキングに関する条項を削除した。SECはその直後の5月23日、ヴァンエック(VanEck)、21シェアーズ(21Shares)、グレイスケール(Grayscale)、フィデリティ(Fidelity)、インベスコ(Invesco)、iシェアーズ(iShares)、フランクリン(Franklin)、ビットワイズ(Bitwise)の8社からの修正版を承認した。その後、プロシェアーズ(ProShares)もここに加わった。

これは、SECがイーサリアム現物ETFを承認する可能性が高いことを意味するが、ETFの取引開始には、「S-1(登録届出書)」の正式な承認を待つ必要がある。

イーサリアム現物ETFの発行者は、SECのコメントに応じて「S-1」の修正版を提出しているが、これはしばしば、協議が進展していることを示す良い兆候だ。最終承認はおそらく最初の「19b-4」承認から90日以内となる可能性が高く、つまり今夏となるだろう(そして、意外と早くなる可能性が高い)。

「S-1」書類からわかること

  • カストディアンへの集中の可能性。ビットコイン現物ETFと同様に、イーサリアム現物ETF発行者の大半は、カストディアンとしてコインベース(Coinbase)を選択しており、競合商品間で集中問題や潜在的な利益相反を引き起こす可能性がある。コインベース以外のカストディアンを選択しているのは、ヴァンエックとフィデリティのみ(ただし、ヴァンエックはコインベースが追加のカストディアンになることを可能にする契約を締結する予定だ)。
  • 作成/償還の単位は発行者によって異なる。iシェアーズ、フィデリティ、ヴァンエックのような大規模発行者は、それぞれ4万、2万5000、2万5000の単位で発行と償還を行う。その他の発行者の多くは1万単位。
  • 手数料戦争については未定。手数料は今のところ不明のままだ(しかし論理的には、ビットコイン現物ETFと同じ水準まで手数料が下がる可能性もある)。
  • リスク要因は大きいが、合理的にアプローチすべき。「S-1」書類で最も長いセクションはリスク要因(いくつかの提出書類では50ページ以上になっている)。しかし、そのほとんどは、標準的な内容であり、ボラティリティの高い市場のリスク、需要不足に関するリスク、新しい資産クラスに関するリスクは、ほとんどの株式やETFにも見られることだ。
  • 投資家は、ETF投資と直接投資の長所と短所を比較検討する必要がある。直接投資家は、イーサリアム現物ETFに関連する複数のメリットを享受できない。一方、ETF投資家は、ステーキングや「フォーク」または「エアドロップ」された資産にはアクセスできない。
  • アーク(Ark)はイーサリアム現物ETF競争から離脱した。暗号資産ETFの世界では有力なプレーヤーであったにもかかわらず、アークはイーサリアム現物ETFの申請書類からその名前を取り下げ、21シェアーズが単独の発行者となった。アークは声明を発表し、「投資家に(イーサリアムへの)エクスポージャーを提供する効率的な方法を評価し、そのメリットを最大限に引き出す方法を検討する」と述べた。これは、ステーキングの欠如、または手数料戦争によってビットコイン現物ETFが採算性のないものになっていることの影響かもしれない。
  • プロシェアーズがイーサリアム現物ETF競争に参入。意外なことに、(暗号資産先物ETFで有名になった)プロシェアーズはビットコイン現物ETFをローンチしなかったが、イーサリアム現物レースには後発組として参加している。ブラックロックやフィデリティのような伝統的金融プレーヤーが再び大きな市場シェアを占めるかもしれないが、プロシェアーズはこの分野での知名度を考えると、その一角を占めることができるかもしれない。

重要ポイント

全体として、今年初めにビットコイン現物ETFという前例が作られたこともあって、イーサリアム現物ETFについては、ビットコイン現物ETFよりも多くのことが分かっている。イーサリアム現物ETFが承認される可能性が高まるにつれ、他の暗号資産ETF(ソラナなど)の前途もより明確になるだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:gopixa / Shutterstock.com
|原文:Crypto for Advisors: Decoding the Ether ETF Filings