Bitcoinステーキングプロトコル「Babylon」とは【bitbank事業開発部 寄稿】

Babylon概要

Babylonは2024年5月30日にParadigm主導で約7000万ドルを調達しており、6月27日現在はテストネット環境であるものの、Bitcoinステーキングプラットフォームとして昨今注目を集めています(参照:Bitcoin Staking Project Babylon Raises $70M Led by Paradigm)。

Babylonの概要としては、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)ブロックチェーンのセキュリティを強化するために、Bitcoinの強みを活用するプロトコルを提供します。特にPoSチェーンのロングレンジ攻撃(Long-Range Attack)に対する対策として設計されており、既存のPoSチェーンの課題を解決することを目指しています。

本レポートでは、BabylonがどのようにPoSチェーンのセキュリティを強化するか、Bitcoinステーキングがプロトコルに必要な理由、その他考察についても記載していきます。

Babylonのコンセプト

Babylonのコンセプトは、主に「Bitcoinタイムスタンプ」と「Bitcoinステーキング」の2つの機能に基づいています。

1.Bitcoinタイムスタンプ

1つ目は「Bitcoinタイムスタンプ」です。PoSチェーンの状況を定期的にBitcoinにタイムスタンプとして記録することで、ロングレンジ攻撃のリスクを低減します。

ロングレンジ攻撃(参照:Babylon Docs

ロングレンジ攻撃は、ブロックチェーンのセキュリティを脅かす一種の攻撃手法です。PoSチェーンでは、攻撃者が過去のブロックを利用して新しいチェーンを作り出し、これを正当なチェーンとして認識させることで、二重支払いなどの不正行為を行うことができます。また、ステーキングを素早く解除することでスラッシング(罰則)を回避できる可能性があります。これにより、新規ユーザーやノードはどちらのチェーンが正しいのか判別できなくなることがあります。

ロングレンジ攻撃の対策としては、ステーキング解除までの期間を長くすることでスラッシング回避をできなくする措置はありますが、客観的に不正行為を検知することが難しいという懸念が残っています。

Bitcoinタイムスタンプ(参照:Babylon Docs

このロングレンジ攻撃への対策として、Bitcoinタイムスタンプが登場します。PoSチェーンのチェックポイントを、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)の代表であるBitcoinのブロックチェーンに対しトランザクションとして残すことで、ロングレンジ攻撃が行われた際、客観的に不正行為を判別することが可能になります。

Bitcoinタイムスタンプにより、客観的かつ短期間に不正行為を判別できるようになり、ステーキング解除の時間を短縮し、PoSチェーンのセキュリティを強化することができます。

しかしながら、Bitcoinのブロックスペースが限られている中でPoSチェーンが各々チェックポイントを残すことはスケーラブルではありません。

Babylonの立ち位置(参照:Babylon HP

そこで、Babylonがハブになるような形でBitcoinタイムスタンプを実行する役割を担い、Bitcoinと各PoSチェーンを同期させることで、スケーラブルにPoSチェーンのセキュリティを強化することができます。

2.Bitcoinステーキング

2つ目は「Bitcoinステーキング」です。これは、BitcoinをステーキングしてPoSチェーンに経済的保証を提供する仕組みです。

Bitcoinタイムスタンプでは、BabylonがBitcoinと各PoSチェーンを同期する役割を持っていることを説明しました。しかしながら、Babylonが不正を行おうとしてしまうリスクがあります。

そこで、Bitcoinをステーキングし、不正をした場合にはスラッシングが発生するようにすることで、PoSチェーンにとっては不正が抑制される経済的保証となります。

Bitcoinステーキングの流れ(参照:Bitcoin Staking Litepaper

BabylonのBitcoinステーキングの特徴として、ブリッジやカストディなどを必要とせず、Bitcoinブロックチェーン上かつノンカストディアルに成り立っています。

スラッシングなどユニークな機能があるため、プロトコルのコード監査は必要であるものの、ノンカストディアルにステーキングできることは非常に重要であると考えられます。

執筆者の考察

Babylonは、既存のPoSチェーンのセキュリティ課題を解決するためにBitcoinを活用した斬新なプロトコルです。現状ではテストネットの段階ですが、メインネットローンチ後にどの程度のBitcoinがステーキングされるかが市場の需給面においても注目されることでしょう。

BabylonによりPoSチェーンのセキュリティを高めるだけでなく、ステーキング解除までの期間を短縮し、ユーザーの利便性を向上させることが期待されます。また、利回りを得たいBitcoin保有者にとっても、ノンカストディアルにステーキングができる点は非常に魅力的です。

今後のBabylonの展開が、ブロックチェーンエコシステム全体にどのような影響を与えるか、非常に興味深いところです。Babylonの取り組みがPoSチェーンの今後にどのように寄与するか、注視していきたいと思います。