米金利高騰でビットコインも警戒必要か【Kraken・リサーチ】

金融市場では米国の長期金利が上昇し、株などのリスク資産が売られ、米ドルや金などの安全資産が買われる展開となっている。この状況にはビットコインなどの暗号資産市場も警戒が必要だ。

クラーケン・インテリジェンス(Kraken Intelligence)の調査によると、ビットコインとS&P500やナスダックなどの米株価指数の相関関係は今年2月に低下したが、依然高い水準を維持している。「デジタルゴールド」と呼ばれるビットコインは、短期的にはリスク資産との相関が高い。

(Kraken Intelligence「ビットコインとリスク資産の相関関係(90日間ローリング)」)

相関関係は、プラス1からマイナス1の相関係数で計測される。1に近いほど相関関係(正の相関関係)が高まり、逆にマイナス1に近いほど逆相関関係(負の相関関係)が高まる。

1月に伝統的な金融市場で話題となった、米電気自動車(EV)大手のテスラや米ビデオゲーム販売大手ゲームストップの株価とビットコインの相関関係は、2月に入って著しく低下した。

テスラは米証券取引委員会(SEC)に提出した2020年度の年次報告書の中で、1月に15億ドル(約1600億円)相当のビットコインを購入していたことを報告。ソーシャルメディアで絶大な影響力を誇るテスラのイーロン・マスクCEOの存在は大きく、ビットコイン価格の上昇とともにテスラの株価は上昇した。

一方、ゲームストップ株に関する騒動は、レディット上で結束した個人がウォール街の既得権益層に立ち向かうという構図が報じられたほか、未だに仲介業者に頼る伝統的な金融業界の構造的な問題点も指摘された。

最近の相関関係の低下は、レディットなどのソーシャルメディアで話題になった後に急騰する「ミーム銘柄」や、ビットコインに対する「過度な楽観(euphoria)」が落ち着いてきていることを示しているのかもしれない。

安全資産とビットコインは逆相関

一方、ビットコインと安全資産(リスクオフ資産)との逆相関は高い水準で推移している。

(Kraken Intelligence「ビットコインとリスクオフ資産の相関関係(90日間ローリング)」)

2月にビットコインと金の相関係数はゼロからマイナス0.44に急低下した。一方、ビットコインとドル指数の相関係数は、マイナス0.73からマイナス0.18までマイナス幅を縮小したが、依然として逆相関水準にある。ドル指数がテクニカル的な重要局面を脱したことや、新型コロナワクチンの普及による経済成長の期待感がドル高を支えていると考えられる。

ビットコインがリスク資産と相関、安全資産と逆相関にある状況では、ビットコイン投資家は、リスクテイクを回避させるようなニュースや指標が突如に現れることを警戒した方がよいだろう。

例えば、2月25日には、米国長期債の金利が急騰して、株などのリスク資産から米ドルや金などの安全資産への資金移動が起きた。現在のトレンドが続けば、ビットコインにとっては短期的には逆風となる展開も想定した方がよいのかもしれない。


千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)– 代表慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社。2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集:佐藤茂
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