ビットコインの価格は、5万ドルの大台をめぐる攻防が続いている。現在の水準は、2017年の強気相場に記録した約2万ドルの最高値の2倍以上で、年初からは72%以上も値を上げた。
昨年3月の新型コロナウイルス・ショックの底値からは、10倍以上に達している。この強気相場の天井はどこにあるのだろうか?
仮想通貨取引所クラーケンのリサーチ・チームである「クラーケン・インテリジェンス」は、ビットコインの価格推移を分析したうえで、今回の強気サイクルにおける調整局面はまだ先であると考えている。
クラーケン・インテリジェンスは、2011年1月からのビットコイン価格の推移に基づき、下記のような成長曲線を描いた。
これらの数字は、サンプル数が少ない中で導き出された数字であることには注意を払う必要がある。
歴史的に強気サイクルの天井からの調整割合は、マイナス70%からマイナス90%で、サポートまで到達する平均日数は385日だった。
この対数曲線のサポート線に沿ってビットコインが推移し続けると仮定した場合、仮に2月末が天井とすれば、385日後に到達する底値は3万620ドルと推定される。しかし、過去の調整割合の傾向を考慮に入れると、2月末が天井だった可能性は低い。
今回の強気サイクルの調整が70%と仮定すれば、385日後に到達する底値が3万620ドルであるため、2月末時点で10万2000ドルに到達していなければならなかったことになる。仮に調整が90%の場合は2月末時点で30万6000ドル、調整が86%の場合は22万1000ドルで取引していたはずということになる。
言うまでもなく、2月末時点でビットコインは70%調整のケースが想定する天井の半分ほどだ。言い換えると、今回の強気サイクルにおける調整局面はまだ先であることを示唆している。
4度目の強気相場
また、クラーケン・インテリジェンスは、2011年1月からのビットコイン価格の推移において、レジスタンス(天井)とサポート(底)を繋げた成長曲線を引いた。赤い対数の線を超えたら「買われすぎ」、緑の対数の線を下回ったら「売られすぎ」と考えられる。
ビットコインは現在、4度目の強気相場の真っ只中にある。
もちろん、ビットコインが今後も上記の成長カーブ通りに動くという保証はどこにもないが、この成長曲線はビットコイン市場が強気相場にいるのか、弱気相場にいるのかを知る上で参考になるだろう。
昨年末からの急騰によってビットコインは天井に急速に近づいているものの、天井まではまだ数万ドルもある。今後数カ月で7万5000ドルを上回った場合、過去の傾向を見ると、ビットコインはサイクルの天井近くにあることを示唆している。
千野剛司氏:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)– 代表慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社。2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。
※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。
|編集:佐藤茂