ビットコイン(BTC)を企業の株と誤解している人が多くいる。ビットコインの価格はときに株式市場と相関することもあるが、実際はまったく別の資産クラスだ。
ビットコインは暗号資産(仮想通貨)、つまり暗号化で安全性が確保されたデジタル資産であり、インターネット上での電子決済、あるいはゴールドやシルバーのように価値保存の手段として使うことができる。
通貨の世界のEメールとして考えてみよう。物理的なかたちでは存在せず、数分で送ることができ、決済の処理に複数の仲介者を必要としない。
米ドルやユーロのような法定通貨は、カードの履歴や電信送金の履歴を単一の機関が一元的な台帳に保存するが、ビットコインなどの暗号資産は「ブロックチェーン」と呼ばれるテクノロジーを使う。ブロックチェーンはグローバルな分散型台帳であり、地球上の誰もが維持し、コピーすることが可能で、完全な変更不可能性と透明性を持っている。
ビットコインと株式の主な違い
株式
- ナスダック、ロンドン証券取引所、ドイツ取引所など、伝統的な証券取引所で取引される
- 月〜金曜日のみ取引可能。取引時間は各取引所によって異なる
- 認可済みの金融商品
- 所有権の法的証拠として、購入者は株券を受け取る
- 企業は上場後に新株を発行できるが、その数には制限がある
- 証券会社は顧客の代理として実行した株式取引の記録を保持する。アメリカでは、投資家が上場企業の株式の5%以上を購入しない限り、この情報は公表されない
ビットコイン
- 中央集権型および分散型の暗号資産取引所で取引される
- 暗号資産市場が閉まることはなく、いつでも取引できる
- 認可を受けた投資商品ではないが、ほとんどの法域で資産として認識されている
- 購入者は自分で保有するか、第三者のカストディアンに安全な保管を委託できる
- 2100万ビットコインという上限が定められている。それ以上の新しいビットコインは発行されない
- ビットコインブロックチェーンはすべての取引を公開状態で記録し、いつでも誰でも閲覧やダウンロードが可能
ビットコイン関連銘柄
上記のような違いはあるが、株価がビットコインのパフォーマンスに関連している上場企業は多い。マイニングなどのビットコインに直接関連する事業を行っているか、準備資産として大量のビットコインを保有している、あるいは暗号資産ユーザーをビジネスのターゲットとしている企業だ。
具体的には、以下のとおり。
- シルバーゲート・キャピタル(Silvergate Capital)
- マイクロストラテジー(MicroStrategy)
- スクエア(Square)
- ライオット・ブロックチェーン(Riot Blockchain)
- エヌビディア(Nvidia)
- アルゴ・ブロックチェーン(Argo Blockchain)
- MGTキャピタル・インベストメンツ(MGT Capital Investments)
- ビットファームズ(BitFarms)
- デジネックス(Diginex)
- ハット8マイニング(Hut 8 Mining)
- ボイジャー・デジタル(Voyager Digital)
- カナン・クリエイティブ(Canaan Creative)
一般的にはビットコイン価格が好調なら、これらの企業の株価も好調となる。逆もまた同様だ。最近ではJPモルガン・チェースが「クリプトカレンシー・エクスポージャー・バスケット(Cryptocurrency Exposure Basket)」と名づけた新しい金融商品を発表した。暗号資産に重点を置いた大手企業を対象とした商品で、投資家は間接的にビットコインやアルトコインに投資できる。
ビットコインと密接な相関関係を持つ株式
投資信託評価会社モーニングスター(Morningstar)のデータによると、株式との相関関係において、2020年はビットコインにとって記録的な年となった。
相関関係は、2つ以上のものの間の関係を測る指標。ここではビットコインと株式市場の値動きの関係を測るために使われている。
相関関係の算出には複数の方法があるが、異なる金融資産の間の相関には、ピアソンの積率相関係数(PPMCC)が用いられる。PPMCCは1.0からマイナス1.0の間で表現され、値がマイナス1.0に近いほど2つの資産の相関関係は低くなる。逆に値が1.0に近いほど2つの資産の相関関係は高くなる。
下図を見ると、S&P500(株式)やゴールド、石油や米国債などの伝統的金融市場とビットコインの間の相関関係は明らかに高くなっていることがわかる。
ビットコインとS&P500(アメリカの主要500企業のインデックス)の相関関係は0.22。多くの機関投資家が暗号資産市場に参入し、大手企業がポートフォリオを分散化させるためにビットコインに投資していることが理由となっているようだ。どちらかの市場が上昇、あるいは下落すると、おそらく波及効果は他の市場にも広がるだろう。
全体のなかでビットコインと最も相関関係が高いのはゴールドで、この2つの人気の「安全資産」はこれまで、経済的な不確実性が広がった時にどちらも値を上げている。
ビットコインはしばしば供給量が希少で限られているために「デジタルゴールド」と呼ばれてきた。だがボラティリティの高さと激しい値動きによって、リスクははるかに高く、予測も難しい。それでもビットコインは、ゴールドと比べて前年比で大幅に高い利益をもたらしている。
|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Is Not a Stock