ビットコインの価格は5月16日までの1週間で約2,300ドル上昇し、8,000ドルを超えた。世界経済が米中貿易摩擦を一因とする株式市場の下落と為替相場の変動に右往左往する中、約1,400億ドル(約15.3兆円)という世界最大の時価総額を持つビットコインの価格は急騰した。
この1週間で何が起きたのか?
Day1〜3:5月10〜12日
アメリカ政府は10日(米東部時間)、中国からの2,000億ドル相当の輸入品に対する関税率を10%から25%に引き上げた。5月に入り、下落トレンドに入っていたニューヨーク・ダウ平均株価は、さらなる落ち込みを余儀なくされる。
一方、10日から12日までの3日間にわたり、ビットコインの価格はおよそ1,500ドル上昇し、7,500ドルを突破。14日には700ドル近く急落したが、同3日間での上昇幅は25%に及んだ。
Day4:5月13日
米国との“貿易戦争”が激化する中、中国は13日(現地時間)、600億ドル相当のアメリカからの輸入品に対する関税を、6月1日に最大25%に引き上げると発表した。中国の報復的な措置に反応して、ダウ平均株価は一時700ドル以上の下落を見せる。
ビットコイン価格は、13日夜から14日朝にかけて約1,000ドル上昇。CoinDeskの価格インデックスによると、同仮想通貨の価格は13日20:00(日本時間)の7,100ドルレベルから、14日7:00の8,100ドル付近まで上昇した。
日本の14日早朝にかけて、何が起きたのか?ケリー・ローフラー(Kelly Loeffler)氏による突然のブログ投稿が、仮想通貨メディアのトップニュースとして取り上げられた。
米インターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)の子会社BakktのCEOであるローフラー氏は、同社が計画しているビットコイン先物取引の開始に向けたテストを7月に行うと発表したのだ。この計画が当局の承認を経て始まれば、ヘッジファンドや機関投資家などがより積極的な取引を行うとする見方が広がった。
Day5〜7:5月14〜16日
トランプ大統領が、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)と中興通訊(ZTE)が製造した通信機器の販売制限に関わるとされる大統領令に署名したと、各メディアが15日(米東部時間)に報じた。
一方、仮想通貨業界の注目は、13日〜15日(米東部時間)にわたりニューヨークで開かれたイベントに注がれた。米コインデスクが主催するブロックチェーン・仮想通貨をテーマにした世界最大級のカンファレンス「Consensus2019」には、米国財務省のテロリズム・金融情報分析担当次官のシーガル・マンデルカー(Sigal Mandelker)氏や、アマゾン・マネージド・ブロックチェーンのゼネラル・マネージャー、ラフル・パタック(Rahul Pathak)氏、ジョージタウン大学でブロックチェーンの研究を行う松尾真一郎氏などが参加し、分散型金融やマネロン対策、商用のブロックチェーンサービスまで幅広い議論が行われた。
ビットコインは14日(米東部時間)、約9カ月半ぶりに8,000ドルを超えた。以後16日まで、同水準で取引が行われている。ビットコインが高止まりする中、時価総額で2番目に大きい仮想通貨イーサリアムの価格も急騰した。16日の1日で約19%上昇し、274ドルに達した。
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文:小西雄志
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Shutterstock