ビットコイン(BTC)以外の暗号資産(仮想通貨)、アルトコインは値を上げ、暗号資産全体の時価総額を数カ月で2倍となる2兆ドル(約220兆円)へと押し上げた。
ビットコイン価格は年初からすでに2倍になり、時価総額は1.1兆ドルに達したが、ここ数週間は停滞している。暗号資産市場は現在、アルトコインが牽引している。TradingViewによると、ビットコインのドミナンス(暗号資産の時価総額全体に占めるビットコインの時価総額の割合)は、年初の約73%から約57%へと下落した。
イーサリアムと競合コインの上昇
時価総額で2番目に大きいイーサリアム(ETH)は先週、2100ドル(約23万円)付近まで上昇し、史上最高値を更新した。
DeFi(分散型金融)の基盤として、利用がさらに拡大するという期待から、イーサリアムは価格面での恩恵を受けている。DeFiは将来、銀行やウォール街の企業に取って代わると考える人もいる。
CoinDesk Researchのデータ&インデックス担当ディレクター、ガレン・ムーア(Galen Moore)は、最近の「アルトコインシーズン」における突出したパフォーマンスが、イーサリアムの競合、あるいは補完的存在となる「スマートコントラクト・プラットフォーム」の暗号資産によるものと分析した。
これらのブロックチェーンはまた、ステーブルコインの利用拡大による恩恵を受けている。
「ステーブルコインとトロン上のDeFi(分散型金融)、そしてビットトレントの本当の価値と用途が明確になったように感じている」とトロンの創業者でビットトレントのCEO、ジャスティン・サン(Justin Sun)氏はコメントした。
トロンとバイナンス・スマート・チェーン
CoinDeskとCoinMetricsのデータによると、トロンの1日の取引数は一貫してイーサリアムの取引数を上回っている。トロンでのステーブルコイン「テザー(USDT)」の取引数も同様だ。
一方、イーサリアムの成功は代償を伴う。人気は混雑につながり、「ガス代」と呼ばれる取引手数料が高騰した。
「パブリックブロックチェーン間の競争は良いこと。イーサリアムで新しいプロジェクトを立ち上げることは不可能に近いというのは本当だ。取引スピードが遅く、手数料が数百ドルもかかるプロジェクトを使おうとするユーザーはいない」(サン氏)
業界の迅速な成長の一例は、大手暗号資産取引所バイナンス(Binance)のバイナンス・スマートチェーン(Binance Smart Chain:BSC)だと、Synergia Capitalのデニス・ビノコウロフ(Denis Vinokourov)氏は話す。
「イノベーティブなプロダクトや魅力的な利回りを提供すれば、最も歴史の長い存在(イーサリアム)に対抗できるという考え方がある。重要なのは、安価で高速な取引だ」(ビノコウロフ氏)
3月11日付けのDappRadarのレポートによると、バイナンス・スマートチェーン(BSC)の取引高は、2月だけで7000億ドル(約77兆円)を超えた。BSCのユニーク・アクティブウォレットは2月、前月の3万から10万8000に増加。一方、イーサリアムブロックチェーンのユニーク・アクティブウォレットは6万7000。
「BSCの成長はアルトコインにとって全般的によいこと。イーサリアム(ETH)と戦えることを意味している」(ビノコウロフ氏)
CoinDeskはバイナンスコイン(BNB)を含めた最近のアルトコインの価格上昇についてバイナンスに取材を行ったが、広報担当者はコメントを控えた。
ベテラン vs ルーキー
機関投資家が牽引してきた2020年初めからのビットコインの大幅な上昇とは異なり、アルトコインの上昇は、早くから暗号資産に投資してきた人と、新たに参入した個人投資家に後押しされているようだ。
「機関投資家がビットコイン市場に参入すればするほど、ビットコインの安定性は向上し、それがさらなる安定性をもたらす」と語るのはCrossTowerのトレーディング責任者、チャド・スタイングラス(Chad Steinglass)氏。
「この新しい動きは多くの投資家にとって歓迎すべき展開だが、早くから暗号資産に投資している多くのトレーダーが望んでいる輝きや『ワイルドな西部開拓時代』精神のようなものは失われていく」
また、株式市場におけるゲームストップ(GameStop)株のような、いわゆる「ミーム株(インターネットで話題となる株)」への個人投資家の関心と同様に、多くの暗号資産トレーダーは「興奮」と「数倍のリターンを得る」チャンスがあることから、ビットコインよりもボラティリティとリスクの高いアルトコインを好んでいると同氏は述べた。
DeFiに重点を置いた暗号資産ファンド、DeFiance Capitalの創業者、アーサー・チョン(Arthur Cheong)氏は、アルトコインへの関心の再燃は「取引に慣れていない個人」トレーダーの参入が要因となっていると指摘する。
「あまりリサーチをしないトレーダーが市場に戻って来ている」と同氏は述べ、個人投資家が大多数を占める韓国におけるアルトコインの取引高増加に触れた。
“アルトコインシーズン”がビットコインに与える影響
ビットコインのドミナンスは低下しているが、アルトコインへの関心の高まりは最終的にはビットコインのメリットになるとアナリストは考えている。
「アルトコインにシフトしている古くからの暗号資産トレーダーは、ビットコインのボラティリティを低下させると同時に、最終的にアルトコインにおける勝者と敗者を決めることになる。これはどのアルトコインにとっても、長期的に価値ある資産となるために必要な条件だ」(スタイングラス氏)
ブロックチェーンデータを提供するクCryptoQuantのCEO、キ・ヨン・ジュ(Ki Young Ju)氏は、増加したキャピタルフローは、時間の経過とともにビットコインに戻っている可能性があると指摘した。
ビットコインは「遅かれ早かれアルトコインの時価総額を吸収するだろう」(ジュ氏)
VISA、ペイパル、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーといった大手金融機関が暗号資産に参入していることは、暗号資産は広く一般への普及が始まっていると考えるトレーダーの自信を強めている。
この1年のビットコインの上昇は、新型コロナウイルス関連の経済刺激策として金融市場に注入された数兆ドルが引き起こすインフレに対するヘッジとして、ビットコインは有用だろうという憶測が加速させている。
また、DeFi人気の高まりに加えて、アートやコレクション品、スニーカーのようなユニークな資産を表すノンファンジブル・トークン(NFT)への関心も最近、急速に高まっている。
|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:トロンCEOのジャスティン・サン氏(CoinDesk archives)
|原文:Latest ‘Altcoin Season’ Fueled by XRP, Tron, Stellar Pushes Crypto Market Value to $2T for First Time