米CoinDesk Researchの「Quarterly Review 2021」(2021年四半期レビュー)は、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ステーブルコイン、ノンファンジブル・トークン(NFT)、DeFi(分散型金融)などに焦点をあて、暗号資産(仮想通貨)市場を牽引するトレンドを考察している。
昨年10月~12月期の成長は、市場に積極参入してきた機関投資家が牽引したが、今年1月~3月期は状況が微妙に変化した。機関投資家の動きは減速しているようだが、依然として重要な存在であり、複数の重要指標は少なくとも今後数カ月間はこの動きが継続することを示している。
指標はまた、個人投資家の関心が高まり、新たな資金の流れや投資パターンが生まれていることを示した。
詳しく見ていこう。
ビットコインの時価総額
ビットコインの時価総額は1兆ドル(約110兆円)を超えた。市場規模としての1兆ドルは強い心理水準である。機関投資家は2020年よりもビットコインの検討にリソースを費やす傾向にある。
機関投資家の取引高
だが、機関投資家のビットコイン投資は大規模と言えるほどではない。機関投資家向け暗号資産取引所(LMAX、コインベースなど)の取引高の伸びは鈍化し、多くの取引所では取引高は減少した。
先物取引の建玉
ビットコイン先物の取引高はほぼ横ばいとなり、ときに急上昇した。だが建玉(未決済の契約総数)は上昇を続けている。これは(投資ではなく)トレーディングが活発化しているサインと見ることができる。
CMEの建玉
そうした状況は、建玉ランキングにおけるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の順位にも現れている。1月、CMEの建玉は1位となったが、その後、バイナンス(Binance)やバイビット(Bybit)など高いレバレッジでの取引が可能な個人投資家向け取引所の伸びが大きく、CMEを追い抜いた。
現物 vs 先物
もう1つの指標もその状況を裏付けている。現物と先物の取引高の比率だ。機関投資家や長期投資家は現物取引を好む傾向があるため、この比率の低下は短期間で取り引きを行うトレーダーが動きが活発化していることを示す証拠と捉えることができる。
トランザクションの伸び
オンチェーンデータを見ると、ビットコインブロックチェーンの取引数と取引高は2020年10月~12月期に急増したが、今年1月~3月期の伸びは鈍化し、ビットコインを保有する動きが進んでいることを示した。平均取引額の伸びは、継続的に価格が上昇したにもかかわらず横ばいとなり、小口保有者が増えていることを示している。
小口保有者の動き
小口保有者の増加はまた、ビットコインアドレスの増加にも表れている。ビットコインを保有するアドレス数は今年第1四半期も急増を続けたが、1000ビットコイン以上を保有するアドレス数は減少し、アドレス数の増加分のほとんどは小口保有者であることを示している。
アクティブアドレス数(一定期間内にビットコインを送受信するアドレス数)は第1四半期を通して比較的一定に推移し、新規参入者の大半は購入後、ビットコインを保有し続けていることを示している。
ビットコインの供給速度
ビットコインを取引するのではなく保有する傾向は、ビットコインの供給速度(ベロシティ:過去1年の取引高を現在の供給量で割ったもの)が再び低下していることにも表れている。
|翻訳:新井朝子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Coin Metrics
|原文Q1 2021: Institutional Growth Slows Down, Retail Ramps Up