興奮が14日に向けて高まっている。暗号資産の取引所や資産管理事業を手がける米コインベース(Coinbase)がナスダックに上場する。ティッカー(証券コード)は「COIN」で、同社の株式が取り引きされる。
重要性を考えてみよう。
・暗号資産業界のユニコーン(企業評価額10億ドル以上の非上場企業)の上場は初めて。
・コインベースの上場によって、暗号資産はさらに「広く一般への普及」が進む。証券会社のアナリストや株式リサーチャーは、コインベースを調査範囲に含め、暗号資産市場についての情報を収集・分析を行うようになる。
・あらゆる投資家が暗号資産市場の進化に投資することができるようになる。
・市場関係者は、ついに「暗号資産の仕組み」を知り、暗号資産の市場インフラの進化を間近で見ることになる。
先週、コインベースは2021年1月~3月期の決算見通しを発表。上場申請後の成長を明らかにした。
・同第1四半期の売上高は18億ドル(2020年通期:13億ドル)。
・同第1四半期の純利益は7億3000万ドル(2020年通期:3億2200万ドル)。
・同第1四半期の調整後EBITDAは11億ドル(2020年通期:5億2700万ドル)
・月間取引ユーザー数は610万人(2020年通期:280万人)
※EBITDA:利払い前・税引き前・減価償却前利益(Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)
これらの数字には目まいがするほどだ。上場時に予想される1000億ドルの評価額を十分に正当化できるだろうか?
一般的な指標で考えると、コインベースの時価総額は1000億ドル〜1100億ドルとなる。コインベースが扱っているのは比較的未成熟な資産であることを考えると、伝統的な取引所よりも成長の可能性は大きい。成長株と考えられるだろうか?
時価総額2000億ドルの可能性も
コインベースの株価がビットコイン(BTC)価格と強く相関すると仮定しよう。
下図のように、ビットコイン価格と、アマゾン(Amazon)やテスラ(Tesla)などに代表される高成長株およびシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)とナスダック(Nasdaq)などの伝統的な取引所株の過去1年間の90日相関は不規則で、相関は見られない。
だがコインベースは暗号資産取引所であり、テクノロジーの成長可能性と暗号資産が広く一般に普及しつつあることを考えると、上場時の一般的な指標よりも、テスラやアマゾンのような成長株に近いと想定される。
つまり、コインベースの時価総額は2000億ドル(約22兆円)を超え、世界の時価総額トップ50に入っても不思議ではない。
また、暗号資産の場合、ユーザー数は直線的な成長を見せるわけではない。ネットワーク効果によって、その成長は指数関数的なものとなる。つまり、認証済みユーザー数(コインベースのアカウントを持つ人の総数)が2021年第1四半期に前四半期から30%以上増加したことは、潜在的価値が大幅に増加したことを示している。
もちろん、これらの考察は投資アドバイスではない。価格が高すぎると捉えられ、上場後に株価が大幅に下落したデリバルー(Deliveroo)社のような失敗になるかもしれない。
だが、その可能性は低い。新規株式公開(IPO)ではなく直接上場であり、投資銀行が野心的な価格設定を行うことはないからだ。直接上場アドバイザーは通常、固定費用を請求するが、IPOアドバイザーは調達額の数パーセントが報酬となる。
だが、以下のようなリスク要因がある。
・成長率は鈍化している。直近の米コインデスクのQuarterly Reviewによると、取引高は1月〜2月の急上昇した後、3月は徐々に減少した。
・マーケット動向は、投資家の関心と保有資産に影響を与える。
・手数料(現状の主な収入源)は競争が激化とともに低下する。
・規制はより面倒なものになり、コンプライアンスコストがさらに増加する。
上場後の株価がどうなろうと、4月14日は暗号資産業界にとってきわめて重要な1日になる。おそらく暗号資産の歴史に刻まれることになるだろう。
|翻訳:新井朝子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Long & Short: Peter Thiel Defines Bitcoin’s Accidental Role in Global Politics