ニューヨーク証券取引所(NYSE)が今週、ノンファンジブル・トークン(NFT)を発行した。NYSEにとっては初の試みで、上場した人気テクノロジー企業6社を記念したものだという。
NYSEのステイシー・カニンガム社長は、発行したNFTはユニティ(Unity)、クーパン(Coupang)、スノーフレーク(Snowflake)、スポティファイ(Spotify)、ロブロックス(Roblox)、ドアダッシュ(DoorDash)の6社が株式の初取引を記念するものだと、ブログに書いている。これらのNFTは、Crypto.comのネイティブブロックチェーンで発行された。
販売計画はない
Crypto.comの最高マーケティング責任者、スティーブ・カリフォウィッツ(Steve Kalifowitz)氏は、構築したばかりの同社プラットフォームでNFTを発行してもらうために、NYSEに金銭を支払ってはおらず、「NYSEが連絡してきた」と米CoinDeskに述べている。
NFT発行によってNYSEは、デジタルコレクションと引き換えに巨額の利益を狙うアーティストやミュージシャン、そして冗談半分にブームに便乗している人たちが群がる新たな分野に参入することになる。
今のところ、NYSEはそうしたマーケットから利益をあげるつもりはないだろう。
NYSE First Trade #NFT: @Roblox ⚙️ First trade on 3.10.21. Click the link in our bio to view all NYSE First Trade NFTs. pic.twitter.com/8HceiC8dDU
— NYSE 🏛 (@NYSE) April 12, 2021
NYSEの親会社ICEの担当者は、NYSEはNFTを「発行」したのであって、販売したわけではないとコメントした。
この件に詳しい関係者は、NFTはそれぞれ6社に贈られ、NYSEはこの先もNFTの販売は計画していないとしている。カニンガム氏はさらに多くのNFTの発行を計画していると述べている。
なぜNFTなのか?
NYSEがNFTを発行した理由は定かではない。一方、Crypto.comのマーケティングチームは、確かにクリエイティビティを発揮している。
同社は先月、スヌープ・ドッグ、ミスター・ブレインウォッシュ、ボーイ・ジョージなどとのコレボレーションを発表し、大きな注目を集めた。世界最大の証券取引所を仲間に加えたことは、投資家に対するきわめてターゲットを絞った戦略かもしれない。
投資家は、NYSEのNFTの“オタク的”な側面に興味を示すかもしれない。NFTは各企業のNYSE上場時の最初の取引データをあらわしている。通常はほとんど見ることのない、判読不能なコードだ。
「それぞれのメッセージは、我々のデジタル台帳に記録されている」(カニンガム氏)
NYSEのきわめて中央集権化されたデジタル台帳の知名度を高めるために、分散型デジタル台帳を使ってNFTを発行することは、少なくとも今の時代を物語っている。
一方、NYSEは、単に面白い試みとしてNFTを発行していると述べている。上場を記念する「楽しく、新しい方法」とカニンガム氏はブログで述べた。
|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Wall Street NFTs? New York Stock Exchange Apparently Has an NFT Strategy