ハッキングされたビットコイン、680億円相当が移動──コインベース上場のタイミング狙ったか

暗号資産取引所のビットフィネックス(Bitfinex)で2016年にハッキングされたビットコインのうち、約6億2300万ドル(約680億円)相当分が14日に移動した。ブロックチェーン取引を追跡している「Whale Alert」のツイートで明らかになった。

14日は、暗号資産取引所を運営する米コインベースがナスダックに上場した、暗号資産業界にとっては歴史的な1日だった。

リアルタイムの暗号資産データを提供するトレード・ザ・チェーン(Trade The Chain)が、移動したビットコインの数を確認したところ、2016年にビットフィネックスから流出した合計11万9756ビットコインの約10%にあたるという。

コインベースのナスダック上場日に起きた今回の大量のビットコインの移動は、偶然ではないとする見方がある。

「今回のビットコインの移動は、コインベースの直接上場に合わせて始まったと考えている。メディアの関心は直接上場に向けられ、多くがコインベースの直接上場に注目していた」とトレード・ザ・チェーンのニック・マンチーニ(Nick Mancini)氏は述べた。

Webメディア「Decrypt」が以前伝えたとおり、ハッキングされたビットコインのうち、5000ビットコイン以上が2020年11月30日に移動している。ちょうど、ビットコイン価格が当時の史上最高値の2万ドルへと上昇している時だった。

市場に与えるリスクは小さい

今回の大量移動が与えるビットコイン価格への影響は、限定的と言えそうだ。

「ビットフィネックスのハッキングで流出したビットコインは、世界中で追跡され、ブラックリストに載っている。どの取引所も扱わない。現金に替えることは決してできない」」とCinneamhain Venturesのアダム・コクラン(Adam Cochran)氏はツイートした。

一方、分散型取引所(DEX)の登場もあり、イニシャルDEXオファリング(IDO)のような資金調達手法を通じて、ハッキングで手にしたビットコインのアドレスを隠蔽することは可能だとマンチーニ氏は指摘した。

「時間と手間はかかるが、我々はビットコインが移されたウォレットを監視している。ハッカーはすでに可能な限り、すべてをわかりにくくしようとしている。今回の移動は最終段階ではなく、盗んだビットコインから価値を引き出そうとする数多くの手段の最初の一段階と考えている」(マンチーニ氏)

|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:$623M in Bitcoin From 2016 Bitfinex Hack Moved Under Cover of COIN Hype