メーカー(Maker)は2017年にブロックチェーンベースのプロトコルとして、初の自動化された大規模な暗号資産融資プラットフォームを立ち上げ、DeFi(分散型金融)ブームのきっかけとなった。
現在、メーカーは600億ドル規模に成長したDeFi業界に新たな成長源をもたらそうとしている。住宅地などの何兆ドルもの「実世界」の資産を担保にした融資だ。銀行などの金融機関と競合することになり、米金融大手シティグループ(Citigroup)がレポートで取り上げている。
メーカーのガバナンストークン「MKR」はこの1週間で55%上昇した。年初から約6倍になっており、時価総額は約40億ドルに達する。
MKRが21日に初めて4000ドルを超えた背景には、プロジェクトを管理する分散型組織「メーカーダオ(MakerDAO」のコミュニティーメンバーが、不動産の所有権を表すERC-20トークンを担保として認めることを投票で可決したことがある。
4月14日に可決され、2日後に実行されたこの提案によって、ブロックチェーンプロトコル「Tinlake」が、不動産ローン会社「New Silver」とMakerDAOをつなぎ、不動産を担保とした融資を実現する。
「これはDeFi(分散型金融)が伝統的な金融に挑むもの」で、まずは米国内での住宅リフォーム向けローンに資金を提供する予定だと、MakerDAOのコミュニティメンバー、セバスチャン・デリボー(Sébastien Derivaux)氏は米CoinDeskに語った。
1/ This happened, a decentralized protocol minted 38k $DAI out of thin air to finance a mortgage loan.
— Sébastien Derivaux (@SebVentures) April 21, 2021
Real-World Asset are now a thing for @MakerDAO thanks to @centrifuge and @NewSilverLend#DeFi meets #RealEstate pic.twitter.com/r1velhuZYg
「分散型プロトコルは、住宅ローンに融資するために3万8000ドルのDAIを発行した。実世界の資産はいまや、@centrifugeと@NewSilverLendのおかげで、Maker DAOで扱うことができる。DAIは不動産と出会った」
最大のDeFiプロジェクト
DeFi Pulseによると、ステーブルコイン「ダイ(DAI)」で知られるメーカーは、預かり資産(TVL)が95億ドルを超える最大のDeFiプロジェクトだ。
MKRは、メーカーダオ(MakerDAO)のガバナンストークンで、保有者にはプロジェクトのルールを改正するための投票権と、プロジェクトの成功に対するリターンが与えられる。
この仕組みにより、コミュニティーにはリスクの大きな融資は承認しないというインセンティブが働く。
実世界の資産を扱うことによって、「融資の対象となる市場は大幅に拡大する」と暗号資産調査会社メッサーリ(Messari)のジャック・パーディ(Jack Purdy)氏は述べる。そして市場拡大は、ステーブルコイン「ダイ(DAI」の供給を増加させ、価格の安定性がより強化される。
暗号資産データサイトのグラスノード(Glassnode)によると、ダイの発行総額は爆発的な需要を反映して今年3倍になり、現在30億ドルを超えている。
「多くの人はメーカーは動きが遅く、エキサイティングなプロジェクトではないとして否定的に捉えている。だが、DeFiの中で最も広く統合されたプロジェクトであり、幾度も試行錯誤を繰り返した末に信頼性の高い分散型ステーブルコインを生み出し、全DeFiの中でトークン保有者に最も多くの利益をもたらしている」とメッサーリ(Messari)のライアン・ワトキンス(Ryan Watkins)氏は語る。
また、注目すべきは、シティグループが先週発表したレポートで、メーカーダオを「decentral bank(分散型銀行)」と呼んでいたことだ。レポートに反応して、MKRの価格は即座に上昇した。
デリボー氏は、「現実世界」の担保は、最終的にはプロジェクト全体の資産の約10%まで増加するだろうと述べた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:メーカーダオ創業者のルーン・クリステンセン氏(CoinDesk archives)
|原文:Maker Price Passes $4K for First Time, as MakerDAO Brings Real Estate to DeFi