4月23日夜に開催された総合格闘技(MMA)の試合は、歴史に残るものになるかもしれない。だがその理由は卓越したフットワークや強烈なエルボーではない。この試合全体がブロックチェーン技術を活用したチリーズ(Chiliz)のファントークンプラットフォーム「Socios(ソシオス)」によって実現したからだ。
23日のPFL(プロフェッショナル・ファイターズ・リーグ)の試合は、ソシオスでPFL関連のトークンを購入したファンによって選ばれた選手が対戦した。ファンはトークンを購入して自分が対戦を見たい選手に投票、ファントークンは提供開始から10分も経たずに50万ドル(約5400万円)分が完売した。
独自トークンは年初から20倍に
「本当にワクワクさせられる」と、資産運用会社アルカ・ファンズ(Arca Funds)のケイティ・タラティ(Katie Talati)氏は語る。「我々は暗号資産に1日中取り組んでいる。だが人口全体から見れば、ほんの一部分に過ぎない。トークン化や暗号資産のメリットを多くの人に提供するには、日常生活と関連した消費者寄りのこうしたアプリケーションを提供する必要がある」
一部の幸運な暗号資産トレーダーは今年、チリーズの独自トークン「CHZ」から大きな利益を上げている。CHZは年初から20倍に上昇し、時価総額は23億ドル(約2500億円)に達している。少し前には考えられなかった金額だ。
比較すると、ビットコイン(BTC)は年初から約70%上昇、イーサリアム(ETH)の価格は3倍になっている。
もちろん、暗号資産は価格ボラティリティを避けることはできない。チリーズのCHZトークンは23日、暗号資産市場全体の下落に飲み込まれた。コインゲッコー(CoinGecko)によると当記事執筆時点、CHZは過去24時間で21%の下落を記録した。
スポーツ×暗号資産
ファントークンが優れた投資かどうかは、プラットフォームの成長スピードにかかっているかもしれない。
マルタに拠点を置くチリーズは22日、スポーツと暗号資産を組み合わせたビジネスモデルの成果として素晴らしい第1四半期の決算報告を行った後、80万ドル(約8600万円)相当のCHZトークンを焼却した。トークンの焼却によってコインの流通量が減ると、理論的にはトークンの価値は高まる。
メッサーリ(Messari)のデータによると、CHZトークンの年初からの上昇は、時価総額10億ドル以上の暗号資産のなかでも有数のパフォーマンスであり、柴犬をモチーフとしたドージコイン(DOGE)や分散型取引所パンケーキスワップ(PancakeSwap)のトークン「CAKE」の驚異的なパフォーマンスと肩を並べている。
スポーツと暗号資産の組み合わせは、すでにパワフルなものであることが証明されている。NBAファンがお気に入りの選手のハイライト動画と結び付けられたデジタルトレーディングカードを購入し、やり取りできる「NBA Top Shot」は、最近ブームとなっているノンファンジブル・トークン(NFT)分野で大きな人気を集めている。
チリーズは2つのプラットフォームを持っている。ファントークン取引所のチリーズ(Chiliz)と、スポーツファンがファントークンを使ってお気に入りのスポーツチームとつながることができるスポーツファン・エンゲージメントプラットフォームのソシオス・ドットコム(Socios.com)だ。どちらもプルーフ・オブ・オーソリティー(PoA)のチリズブロックチェーンで運用されている。PoAでは管理者が参加者を招待し、信頼された参加者のみがノードとして参加できる。
「昨年以降、デジタル資産市場はさまざまな分野やジャンルを認識するようになり、投資に活用している。チリーズはきわめて独立したプロジェクト。同じような方法でファンにインセンティブを与えるためにトークンを利用しようとしているプロジェクトは、スポーツ分野には他に存在しない」
チリーズは2018年、プライベートトークンセールを通じてバイナンス(Binance)、オーケー・ブロックチェーン・キャピタル(OK BLockchain Capital)、FBGキャピタル(FBG Capital)などから6500万ドル(約70億円)を調達。今年はシカゴのトレーディング会社、ジャンプ・トレーディング(Jump Trading)から出資を受けた。また最近では、楽天ヨーロッパと提携、ヨーロッパの楽天ユーザーは楽天ポイントを使ってファントークンを獲得できるようになった。
|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:総合格闘技のイメージ(Shutterstock)
|原文:Chiliz’s CHZ Holders Love the Nasty Elbows – And the 20-Fold Price Gains in 2021