暗号資産のイーサリアム(ETH)に大きな追い風が吹いている。大型アップデート「イーサリアム2.0」への楽観論や、NFT(非代替性トークン)とDeFiなどのイノベーション、機関投資家からの需要拡大などに支えられて4月のイーサリアム価格は45%も急騰した。
一方、ビットコイン(BTC)は2%のマイナスだったが、最近の調整相場には底が見え始めている。
「強い需要・弱い供給」のイーサリアム
暗号資産(仮想通貨)取引所のイーサリアムの保有量は4月も減少傾向が続いた。同月22日には約2年半ぶりに11.8%をつけた。取引所の保有量が減少するということは、一般的に投資家が暗号資産をすぐに法定通貨に換金する必要性を感じておらず、オフラインのウォレットで保管する傾向が強くなっていることを示している。
また、イーサリアムの「クジラ(1万ETH以上のイーサを持つアドレス)」の数が4月に入って急増した。2つの指標を合わせて考えると、大口の投資家がイーサリアムを長期保有していることが読み取れる。
「強い需要・弱い供給」ビットコイン
ただ、「強い需要・弱い供給」の観点からビットコインの出来が悪くなったわけではない。4月はマイナスと言ってもたったの2%で、取引所のビットコイン保有量とクジラの数から見ると、依然として良い地合が続いている。
暗号資産取引所が保有するビットコインの割合は4月も減少を続け、19日に3年ぶりの低水準となる12.8%をつけた。すぐに売りに回る可能性のあるビットコインは減り続けている。また、4月はビットコインのクジラによる利益確定売りのペースにも歯止めがかかったようだ。1万BTC以上を保有するアドレス数は3月は下落傾向に転じていたが、4月はほぼ横ばいで推移した。
また、ビットコインの売却価格/購入価格の割合を示すSOPR(Spent Output Profit Ratio)は、4月に1を下回った。誰も売却時に損失を出したくないため、SOPRの1への低下はビットコインを売りに動く投資家が少なくなることを示している。
実際今年に入ってSOPRが1を下回ったことは2回あるが、その度に価格は底をつけていたことが分かる。(クラーケン・リサーチの詳細はこちら)
千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社。2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。
※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。
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