中国のスマートカードメーカー、Chutian Dragonは、ノルウェーのIDEX Biometrics ASAの指紋認証技術を利用したデジタル人民元用カード型ウォレットの製造を計画している。IDEX Biometricsが今月に発表した。
指紋認証技術を使ったウォレットは、デジタル人民元を使用する際のプライバシーへの懸念をより大きくする可能性もある。
Chutian Dragonの取り組みは、デジタル人民元の普及をサポートする中国テック系企業の数多くの取り組みの1つと言える。アリペイが手がけるデジタル人民元用モバイルアプリ内のオンライン決済サービスはすでに稼働している。中国の4大商業銀行の顧客は、デジタル人民元用アプリを使ってフードデリバリーやオンラインショッピングの決済を行うことができる。
デジタル人民元のハードウェア
北京に拠点を置くChutian Dragonは、中国の政府機関や、中国移動通信(チャイナモバイル)や中国銀聯などの国営企業に長年にわたってスマートカードを提供。デジタル人民元のハードウェアとしてカード型ウォレットを製造している。
IDEXの声明によると、Chutian DragonとIDEXのパートナーシップは、2019年に両社が決済カードを共同開発した際のライセンスと合意に基づいている。
この協業に中国人民銀行(PBOC)が関与しているかどうかはわからない。Chutian Dragonは4月、デジタル人民元用のカード型ウォレットはごく少数しか製造しておらず、まだ大量生産はできないと説明していた。
また同社はその際、「研究開発、生産、マーケティングなどのデジタル人民元に関連する事業には、多くの不確定要素がある」としていた。
決済系スタートアップの株価は上昇
2021年3月に中国・深セン市場に上場したChutian Dragonの株価は、上場日から8倍以上に上昇し、時価総額は27億ドル(約2900億円)に達している。
デジタル人民元構想の恩恵を受ける中国のテック系企業は、Chutian Dragonだけではない。決済テクノロジー系スタートアップの多くの株価も上昇傾向にある。
中国人民銀行は、デジタル人民元に「コントロール可能な匿名性」を導入している。ユーザーは特定の個人や事業体と匿名で取引できるが、取引が疑わしいと判断されたり、違法とみなされた場合、中国人民銀行は取引データをチェックすることができる。また、デジタル人民元を大量に保有すると、プライバシーが制限される可能性がある。
米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、デジタルドルはデジタル人民元よりもプライバシー保護に優れているはずだと述べている。だがFRBはデジタルドルでのプライバシー保護について、技術的な詳細を明らかにしていない。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)の中央集権的な性質は、セキュリティやプライバシーの面でビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)をリプレースすることはできず、CBDCは中央銀行に個人データを収集するための効率的な方法を提供する可能性があるとの見方も聞かれる。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:深センのセルフレジ(Shutterstock)
|原文:Card-Based Digital Yuan Wallet Manufacturer to Use Fingerprint ID Tech