米国の人気テレビ番組ではドージコインが取り上げられ、ウォール街ではビットコイン投資が広がる中、暗号資産はかつてなく幅広い層の人たちに届いている。高騰する価格は間違いなく、新規参入者を惹きつけるが、飛びつく前にはリスクも心得る必要がある。
暗号資産に関心を寄せ始めたばかりで、投資するかどうか迷っている多くの人のために、投資に足を踏み入れる前に知っておくべき10項目をまとめた。
いくつかの暗号資産の価格が高騰するなか、投資すればすぐにお金持ちになれるとテレビやバーで聞いて関心を持っている知り合いがいるなら、この記事をぜひシェアして欲しい。
1. 失ってしまっても大丈夫な分しか投資しない
暗号資産はその他多くの投資よりもリスクが高い。ボラティリティ以外に保証されているものはない。さらに、大半の場合は規制を受けていない。米連邦預金保険公社(FDIC)による保証もなければ、最後の頼みの綱となる買い手もいない。暗号資産の価格は毎分のように激しく上下する。市場は現在、値上がりしているが、辛く長い修正を耐え忍んだこともあり、それは確実に再び繰り返すだろう。
危険の度合いは異なる。元祖暗号資産のビットコインは誕生以来10年以上経っており、その他の大半のコインよりも消滅する可能性は大いに小さい。しかし、リスクがないわけではない。
一生かけて貯めてきた全財産をどんなコインにも投資することのないように。
2. リサーチは徹底的に
どんなデジタル通貨でも、ある程度の額を投資する前には、背景となるテクノロジーのリサーチに何時間も費やし、価値提案とリスクを理解しよう。(「誰かがより高い価格であなたから買い取ってくれる」というのは価値提案ではない)
手に入るあらゆる情報を読み込もう。(基本情報を扱ったCoinDeskの記事から始めるのもお勧めだ)コミュニティーフォーラムや開発者向けのメーリングリストを読む。ポッドキャストを聞く。デジタル通貨だけではなく、暗号化技術、ゲーム理論、経済学など、関連する分野についての本を図書館から借りる。CoinDeskや競合メディアの記事を読む。
新型コロナウイルスによるロックダウンが実施されていないなら、地元での集まりに顔を出す。質問をたくさんする。理解できないことがあれば、説明を求めることを恐れない。説明してもらった後でも分からなくても、自分のせいではないと考えよう。
意味の分からないことを相手が言っている可能性もある。誠実な人ならあなたを助けるために時間を割いてくれるだろうが、そうだとしても、自分が保有しているコインを買うように勧めて、値上がりを狙っている可能もあるので要注意だ。
確信が持てたとしても、懐疑的な人を探して、彼らの主張にも耳を傾ける。イギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミルの言葉を胸に刻もう。
「自分側の主張しか知らない人間は、ほとんど何も理解していない」
知るべきことをすべてリサーチしきったと感じた後にも、さらに掘り下げよう。おそらくリサーチはまだ完了していなかったはずだ。
3. 「FOMO」に打ち勝とう
機会を逃さないためだけに投資するのだとしたら、逃していないのはすべてを失うチャンスだけだ。
FOMO(機会を逃すことへの恐怖:fear of missing out)は、長年貯めてきた財産を破壊する確実な道だ。問題なのは、最初にリサーチするべきはずだったことに関する直感的な反応だ。直感に基づいて取引すれば、すぐに上手くいかなくなるだろう。
投資するものを知ること。徹底的に知ること。投資アプリであるコインが1日で30%値上がりしたのを確認することは、リサーチとは呼べない。下落していく暗号資産を買わされた、不幸な間抜け者になってしまう可能性もあるのだ。
どのコインにも、見境なく売り込んでくるファンがいる。ビットコインでさえもだ。周りからの圧力に負けないこと。もう高校生ではないのだから、自分の頭で考えて、そのパフォーマンスに基づいて評価しよう。
リサーチに次ぐリサーチが鍵となる。
4. 出来すぎた話のように聞こえるなら、おそらくその通りだ
ウォール街や議会、弁護士会と同じように、暗号資産の世界にもペテン師たちがあふれている。ビットコインをしのぐものになると約束してくるプロジェクトが有り余るくらいにある。本当にそうなるのか?見極めるための方法はただ1つ。リサーチだ。
購入する時に注意するべきはもちろんのことだが、借りる時にも用心が必要だ。暗号資産取引所の中には、100倍以上のレバレッジを提供するところもある。つまり、投資コストの最大99%を借り入れることができる。コインが値上がりすれば、利益は膨らむが、逆に値下がりすれば、すぐに一文無しになる可能性もある。
5. 信じ込まずに、検証する
暗号資産市場には詐欺師が大勢いる。先週末にも、TV番組『サタデー・ナイト・ライブ』へのイーロン・マスク氏の出演を利用して、インチキのオファーで10万ドル相当の様々な暗号資産を盗もうとした悪者がツイッターに現れた。
同TV番組の公式ツイッターアカウントのふりをして、アドレス確認のために少しの暗号資産を送るように仕向けたのだ。送金をすれば、送った分の10倍の暗号資産を受け取れるという話だった。
この上手すぎる持ちかけは、警戒すべきサインであった。
6. 「単位バイアス」にご用心
あるコインが1ドルで取引されているからといって、5万8000ドルのビットコインよりも「安い」ということではない。すべてのコインは平等に作られてはいない。
世間には文字通り、何千もの暗号資産があふれており、中にはビットコインと張り合おうとしているものもあれば、別の問題を解決しようとしているものもある。開発者によるサポートや、分散化の度合いはそれぞれに異なっている。
コインの価値を決定するには、そのコインがどのように、どんな理由で生まれたかを尋ねる必要がある。有用性は何であることになっているのか?誰が関与しているのか?開発者コミュニティーはどれほどの規模なのか?
オープンソフトウェアへのアップデートが記録されるギットハブ(GitHub)上のレポジトリはどれほどアクティブか?建物と同じように、コードベースにもメンテナンスが必要で、ほったらかしにすれな不安定になりかねない。
極めて重要なのは、コインのセキュリティモデルは何のか、という点だ。プルーフ・オブ・ワーク(PoW)か、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)か、それ以外の何かか?前者であれば、ハッシュレートは他のPoWコインと比べてどうか?これらの言葉が分からないなら、投資する準備は出来ていない。
7. 秘密鍵がないのなら、自分のコインではない
暗号資産は現金や宝石のような無記名資産だ。つまり、保有者が正当な権利を持った所有者と推定される。失くしたり盗まれてしまったら、それで終わりだ。
だからこそ上級ユーザーは、デジタル通貨ウォレットの暗号鍵を取引所などの第三者に預けないようにアドバイスする。そういった企業は多くの場所で、おおむね規制を受けておらず、ハッキングや出口詐欺(顧客の資金を盗むこと)の被害に遭うかもしれない。
分散型金融(DeFi)プラットフォームはここ10カ月で、数え切れないほどの高額な被害に遭っており、バイナンス(Binance)のような中央集権型プラットフォームも、それなりの被害に遭ってきた。
しかし、ハードウェアデバイス上や、紙に書きつけたりすることで秘密鍵を自分で守るのは気が気ではないかもしれない。失敗も容易に起こり得る。だから経験を積んだ投資家の一部でさえも、第三者のカストディアンを利用することを選ぶのだ。
暗号資産にはトレードオフがつきものだ。秘密鍵を書き記した紙切れを無くさず、(資産にアクセスするためのパスワードである)「シードフレーズ」を忘れない自信があるだろうか?不安な場合には、自分のデジタル資産を誰かに保管してもらわなくてはならないが、過去を振り返れば、そうするべきではない理由はいくつでも見つかる。
(リスクを抑えるために、マルチシグウォレットというものも存在する。例えば、ウォレットから資産を取り出すにはボブとアリスの両方がトランザクションを承認しなければならない、あるいはボブかアリスの片方で良い、またはボブとキャロルとテッドとアリスのうち3人が承認しなければならないなどと、設定することができる。複雑なのは確かだが。)
セキュリティー上の弱点を突く攻撃以外にも、支払い能力の問題から法的トラブルまで、様々な理由で取引所はいつでも出金を停止する可能性がある。さらには、常時稼働するのに必要なインフラが整っていない取引所もあるのだ。例えばコインベース(Coinbase)やロビンフッド(Robinhood)は時に、市場のボラティリティが高まった場合に停止する。自分のウォレットを自ら運用していない限り、自分のコインを管理できる保証はないのだ。
それでも、取引所を使った方が良い理由は多岐にわたる。だからこそ、ユーザー同意書を読んで、様々な不足の事態から確実に保護されていることを確認することが大切だ。
8. 1ビットコイン(やその他大半の暗号資産)のほんの少しだけを買うことも可能
1コインをまるまる買わなくても良いのだ。例えばビットコインは、小数第8位の0.00000001BTCが最小単位だ。どんなものか興味があるなら、10ドル相当分だけを買って、試してみることもできる。
ビリオネア投資家のマーク・キューバン(Mark Cuban)氏が先日テレビで語った通り、ドージコインを少し買うのは「宝くじよりもはるかに優れている」のだ。残念なことにキューバン氏は、税金のことに触れずに、ドージコインで買い物することも勧めていたが。
9. 税金を理解する
これは特にアメリカで、いくつかの理由から重要だ。まず、米内国歳入庁(IRS)は税務上、暗号資産を通貨ではなく資産に分類している。つまり、コインを1ドルで買って、価値が2倍になり、儲けた1ドルでガムを買ってしまったら、キャピタルゲインを申告し、それに対する税金を支払う義務があるのだ。暗号資産業界からのロビー活動にも関わらず、「軽微なための免除」は適応されない。
さらに、中央集権型取引所は定期的に、IRSにアカウント情報を報告している。暗号資産は確かに、株式や銀行ほどは規制されていない。しかし、米連邦政府は大きな赤字を抱えており、暗号資産取引について問いただすために人員を送り込むことを躊躇したりはしない。
10. ドルコスト平均法を利用して、価格に一喜一憂しないこと
外に出る。新鮮な空気を吸って太陽を浴び、エクササイズ。家族と一緒に過ごす。これらと暗号資産投資は両立することができるのだ。
市場は日々、毎分ごとに変動するが、価値のある暗号資産はすべて、価値のある投資ならどんなものでも、長期戦だ。ドーパミンを放出させて興奮を味わいたいのなら、ランニングに行くか、アクション映画を見た方が良い。
投資をして、執着しないためのベストな方法?ドルコスト平均法(DCA)を使うことだ。好きな暗号資産を定期的に(毎日?毎週?毎月?毎年?あなた次第だ)一定のドル相当分購入して、チェックしない。
長期的な見通しがあるなら、DCAを使った場合に短期的値動きに基づいてポジションを変えなければいけないとプレッシャーを感じることはない。
この記事の目指すところは、魅力的で、世界に変革をもたらす可能性のある暗号資産に人々が怖気づくようにすることではなく、しっかりと目を見開いて投資を始めてもらうことだ。
昔の刑事ドラマの名台詞にある通り、「皆気をつけていこう」
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Buying Your First Crypto? 10 Things You Should Know