G20の福岡で開かれるもう一つの会議──開発者たちが語る重要な未来の課題とは?

6月8日、福岡市で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、米中貿易摩擦や仮想通貨を利用したマネーロンダリング(資金洗浄)など、世界が直面する課題が議論される。

同日、G20会場から約5キロ離れたLINE Fukuokaでは、ブロックチェーンの開発者十数人が集まり、次世代技術の重要課題について話し合う。新たな技術の利用が広がる前に、開発者たちが語るものとは何か。

G20の裏イベントとも言える開発者会議「Node Fukuoka」には、知られた開発者たちが出席する予定だ。京都大学経営管理大学院に在籍中の木村優氏は、LCNEM株式会社CEO(最高経営責任者)で、法定通貨に連動するステーブルコインについて話す。

東京大学大学院情報理工学系研究科の山下琢巳氏は、「未踏IT人材発掘・育成事業スーパークリエータ(2018年度)」に選ばれた16人のうちの1人だ。独自ブロックチェーン「Vreath」について話す末神奏宙氏は、「未踏ジュニア」の2018年度スーパークリエイタに選ばれている。

イベントの企画を主導したのはCryptoeconomics Lab・CTO(最高技術責任者)の落合渉悟氏と一般社団法人クリプト代表理事の伊部紀昭氏。落合氏は、イーサリアム・ブロックチェーンの処理性能を上げるプラズマ(Plasma)の開発を進めており、同イベントでは基調講演を行う。

落合氏は「ブロックチェーンがもたらす未来の社会を考えることをせずに開発を続けることは、ゴールが分からないままマラソンを続けるようなものだ」とCoinDesk Japanの取材で語った。「開発する以上、ブロックチェーンの後の社会を考え抜くことは我々の義務だと考えている」

Node Fukuokaの出席者は国内開発者に限らない。「CleanApp」と称するブロガーは暗号通貨が広まった後の社会について、海外から音声会話システムを通じて議論に参加する。CleanApp氏は、暗号通貨と社会との接点について幅広く考察する人物である。

仮想通貨・ブロックチェーン領域は技術者だけではなく、各国の規制当局者がG20で議論する段階になった。技術革新によって将来の社会がどう変化するか。各国政府だけでなく、開発者たちの間でも議論が始まっている。技術革新のもたらすリスクを軽減しながら、いかに利益を得るか。将来の社会を見据えて、G20の福岡には多様なステークホルダーが集う。

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文:小西雄志
編集:佐藤茂
写真:Node Fukuoka