米通貨監督庁(OCC:Office of the Comptroller of Currency)は、過去1年間で発表した暗号資産関連の指導(ガイダンス)を再検討する。OCCの新長官代理が語った。
OCCの新長官代理、マイケル・スー(Michael Hsu)氏は、デジタル資産や暗号資産にまつわる問題を含め、OCCの懸案の問題、書簡、ガイダンスのすべてを再検討することを要請した。
OCCの暗号資産ガイダンスの大半は、元長官代理のブライアン・ブルックス(Brian Brooks)氏の任期中に発表されたもので、より幅広いバンキングセクターによる暗号資産業界受け入れにとって重大な分岐点となった。
「OCCにおいては、責任あるイノベーションを推進することに重点が置かれてきた」と、スー長官代行はコメント。「例えば、Office of Innovationを創設し、国内の銀行や信託企業の認可のための枠組みをアップデートし、そして暗号資産カストディサービスはバンキング業務の一環であると解釈してきた。職員たちに、このようなアクションを再検討するよう要請した」
オープンな姿勢を保つつもりだが、消費者にとっての銀行の安全性を確保するために「全力を傾ける」と、スー長官代理は語った。
「より大きな懸念は、過去の取り組みが、すべての利害関係者と完全に連携しては行われなかったという点にある。さらには、規制の境界に関するより広範な戦略の一環でもなかったようだ。この2点に対処することが、優先されるべきと考えている」と、スー長官代理は説明した。
スー長官代理は5月19日、連邦レベルの銀行規制当局すべてが参加する、下院の金融サービス委員会の公聴会で証言する方針だ。
OCCによる暗号資産の再検討
公聴会の覚書にも、下記の通り、デジタル資産とブルックス長官時代のOCCの暗号資産関連の取り組みが取り上げられている。
「オンライン貸付業者、支払い処理業者、その他のフィンテック企業がマーケットシェアをますます拡大する中、テクノロジーは金融システムに急速に影響を与えている。その結果として、これら企業の多くは、影響を受ける規制や監視を減らしつつ、特にOCCとFDIC(米連邦預金保険公社)が、バンキング行為への関与を許可することで、州ごとにかかる負担を軽減し、銀行のような行為を可能とする国家レベルの認可を望んでいる」
スー長官代理は一部の取り組みについては慎重な姿勢を見せたが、フィンテック企業は無くならないことも認めた。
「OCCが認可を与えるあらゆるフィンテック企業が、消費者や企業の金融上のニーズに公平かつ公正に対処し、クレジットの利用可能性を促進するという重要なゴールをサポートすることを期待している」とスー長官代理。「認可を与えるというOCC独自の権威を認識して、我々はフィンテックや支払いプラットフォームが、どのようにバンキングシステムの中に収まるかを検討するための方法を見つけ出さなければならない。FDIC、FRB(米連邦準備制度理事会)、そして各州と協力していく」
OCCは今年、暗号資産関連の3社に対して信託認可を与えた。アンカレッジ(Anchorage)、プロテゴ(Protego)、そしてパクソス(Paxos)だ。アンカレッジが信託認可を受けたのは、ブルックス元長官代理の任期中であったが、残り2社への認可は彼の退任後だ。
業界ロビイスト団体ブロックチェーンアソシエーション(Blockchain Association)のエグゼクティブディレクター、クリスティン・スミス(Kristin Smith)氏は声明の中で次のように述べた。
「新しく任命されたOCC長官代理が、就任後に近年の政策上の決定を再検討するのは驚くことではない。スー長官代理が金融イノベーションの重要性を認めたことに私たちは励まされており、新しい地位についた彼のサポートをしたい」
スー長官代理の発言が行われたのは、再検討対象の書簡の多くに署名したチーフカウンセルのジョナサン・ゴールド(Jonathan Gould)氏が退任すると、OCCが発表した翌日だった。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:ブライアン・ブルックス元OCC長官代理(ティム・スコット上院議員事務所)
|原文:New OCC Chief Signals Greater Caution on Crypto