リブラのビジョンは「甘かった」:ディエム・エコノミスト

フェイスブックが主導して2019年に発表したデジタル通貨構想の「リブラ(Libra)」は、当初の通貨設計が大きく変更され、名称も「ディエム(Diem)」に変わった。ディエムでチーフエコノミストを務めるクリスチャン・カタリーニ氏は26日、リブラが掲げたビジョンは「甘かった」と発言した。

米CoinDeskが主催するカンファレンス「Consensus2021」に登壇したカタリーニ氏は、ディエムは過去からの教訓を学び、長期的には成功を収めていくだろうと述べた。

ディエム(旧リブラ)は、2019年6月に野心的と思える内容のホワイトペーパーを発表。以来、何度か計画を変更してきた。プロジェクトは世界中の規制当局から批判され、リブラ協会に加盟する複数の企業が脱会した。

一度はスイスに拠点を設けたが、今年5月にはアメリカに移し、米ドルに連動するステーブルコインを発行するために、暗号資産に積極的に取り組むシルバーゲート銀行(Silvergate Bank)と提携した。

「我々は世界中の規制当局と広くつながりをもち、さまざまな面で進化している。消費者を保護し、ネットワーク上の金融犯罪に対抗するために管理機能を強化している」

一時的な取り組み

24日、同カンファレンスの基調講演には、米連邦準備制度理事会(FRB)のラエル・ブレイナード理事が登壇、中央銀行デジタル通貨(CBDC)は「消費者や企業をリスクにさらす可能性がある」と述べた。

カタリーニ氏は、ブレイナード理事のスタンスに全面的に同意すると述べ、「現在のステーブルコインの状況を見ると、多くのものがステーブルコインと呼ばれている」と、既存プレーヤーの安定性と経済構造に疑問を呈した。

同氏によると、ディエムはまったく違うものになるという。ディエムはアメリカのCBDC「デジタルドル」の代用になることを望んでいる。

「我々が提案しているのは、官民のパートナーシップだ。シルバーゲート銀行のような発行者が我々と連携して“ディエムドル”を発行するが、CBDCが登場するまでの間に限る。(中略)私の知る限り、我々はトークンを段階的に廃止して、CBDCに置き換えることを公に約束した唯一のステーブルコイン発行者だ」

カタリーニ氏は、テクノロジーを活用したアメリカの金融システムの進化形を思い描いている。そこではCBDCが基盤となり、ディエムは「その公的システム上で、新しいユースケースや活用例を実現する決済ネットワーク」として機能する。

再びアメリカを拠点に

カタリーニ氏は、スイスからアメリカに拠点を移した理由について、アメリカの規制環境の進化をあげた。また、プロジェクトが複数通貨のバスケットではなく、単一通貨に裏付けられたデジタル通貨に移行したことをあげ、「現在の体制では、スイス金融市場監督局(FINMA)のライセンスはもう必要ないと考えているので、ライセンス申請は取り下げる」と付け加えた。

世界の金融規制当局に対して、ディエムは慎重に対応している。

「我々は中央銀行と連携し、各国のルールや規制に抵触しない解決策を見つけることを明確にしている」

当初の壮大な計画から縮小したものの、ディエムは銀行口座を持たない人々にサービスを提供すること、いわゆる金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)を目標に掲げている。しかし、それを具現化するには時間がかかる。

「時間をかけて、優れたアイデンティティ基準を開発しなければならない。良いユーザーと不正ユーザーを区別することは非常に難しい。おそらくまだ数年の時がかかるだろう」とカタリーニ氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Diem Co-Creator Says Original Plan for Stablecoin Was ‘Naive’