中銀デジタル通貨(CBDC)はイーサリアムで運用できる:元・中国デジタル通貨研究責任者

中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、物理的な現金のデジタル化ではなく、スマートコントラクト機能を組み込むべきであり、将来的にはイーサリアムなどのブロックチェーンネットワークで運用されるようになるだろう。中国人民銀行の元・デジタル通貨研究責任者の発言が、中国国内で報じられた。

中国証券監督管理委員会 科学技術監督管理局の局長で、以前には中国人民銀行(PBoC)でデジタル通貨研究の責任者を務めたヤオ・チエン(Yao Qian)氏は、29日・30日に北京で開催された国際金融フォーラム2021年春季大会に出席し、自身の考えを述べた。新浪財経(Sina Finance)が31日に伝えた。

スマートコントラクトとは、一定の条件に合致した際に自動的に実行するブロックチェーン・コードのことで、法的契約を補完したり、置き換えることが可能だ。

一方で同氏は、スマートコントラクトの脆弱性に起因するセキュリティ問題を指摘し、同技術にはまだ成熟の必要性があるとコメントした。さらに、デジタル契約の法的地位についても懸念があると加えた。

そのため、中央銀行は慎重なアプローチを取るべきであり、シンプルなスマートコントラクトから始めて、安全性と合法性を明確にしつつ、複雑なものにしていくべきとしている。

「2層」アプローチ

ヤオ氏は、中国人民銀行のデジタル通貨研究室を立ち上げた後、2018年に同行を離れ、2019年末に中国証券監督管理委員会に移った。同氏はCBDC技術に関する中国人民銀行の特許申請において、考案者もしくは共同考案者として記載されている。

中国人民銀行は、商業銀行や決済事業者と連携してCBDCの「デジタル人民元」の実証実験を進めている。ヤオ氏は、CBDCは必ずしも口座ベースである必要はないと述べる。

理論的には、「2層」アプローチによって、デジタル人民元やデジタルドルは、イーサリアムネットワーク、あるいはフェイスブックが主導するディエム(Diem、旧リブラ)ネットワークで運用することができる。これにより、中央銀行は金融仲介を必要とせずに、ユーザーに直接CBDCを提供することが可能になる。

「階層化された運用により、中央銀行デジタル通貨は銀行口座を持たない人たちにメリットをもたらし、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)を実現できる」とヤオ氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:中国証券監督管理委員会のヤオ局長(CoinDesk archives)
|原文:Ex-Head of China’s Digital Yuan Effort Says CBDCs Could Operate on Ethereum