ビットコイン(BTC)先物市場は「バックワーデーション(backwardation)=逆ざや」の状態になっており、米銀大手のJPモルガンチェースは、大手機関投資家の暗号資産に対する需要の弱さをあらわしていると最新のレポートに記した。
バックワーデーション:商品先物取引などで、決済期限が最も近い期近物が期先物にくらべて高い状態のこと。限月間の価格差を利用した取引では、逆鞘(ぎゃくざや)のことである。バックワーデーションの逆はコンタンゴ(Contango)と呼ぶ。
ビットコイン現物価格の下落で、機関投資家はシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のビットコイン先物から資金を引き揚げ、先物市場におけるバックワーデーションを引き起こしている。
2018年以来のバックワーデーション
JPモルガンが9日に発表したレポートは、ビットコイン先物のバックワーデーションは最近出現したと指摘した。つまり、2カ月後に満期を迎える先物価格と、現物価格の21日移動平均のスプレッド(価格差)がマイナスに転じた。これは2018年以来のこと。CMEは2017年末にビットコインの先物取引を開始している。
「通常見られない展開であり、ビットコインに投資するためにCME先物を利用する傾向がある機関投資家のビットコイン需要が現時点でいかに弱いかを反映している」と同行グローバルマーケット・ストラテジストのNikolaos Panigirtzoglou氏が率いるアナリストチームは指摘した。
バックワーデーションはしばしば、コモディティ市場で需要が供給を上回っていることを表すと考えられている。だが注意すべきは、ビットコインは原油や赤身豚肉のようなコモディティ商品ではなく投機的な資産であるため、ビットコイン先物市場における状況は既存のコモディティ市場で起きるものとは異なる可能性があると、アナリストは先月、CoinDeskに語っている。
現物価格に対する2カ月満期のビットコイン先物のスプレッド(価格差)の21日移動平均は、2018年のほとんどの期間、マイナスだった。ビットコインは1年を通して弱気トレンドとなり、1万7000ドル付近から3200ドルまで下落。CME先物が2019年はじめにコンタンゴに戻ったあと、トレンドは反転した。
ビットコインは過去2週間、3万ドルから4万ドルのレンジにとどまっているが、CME先物は逆ザヤのままだ。JPモルガンのアナリストは、先物がコンタンゴに転じれば、ネガティブな見通しを覆すことができるとしている。
ドミナンスの低下も弱気シグナル
またアナリストは、暗号資産全体の時価総額に占めるビットコインのシェア(いわゆるドミナンス)が低いことを弱気シグナルと捉えている。
「我々は以前、4月から5月にかけてビットコインのシェアが60%から40%まで急激に低下したことは、2017年12月の個人投資家が主導したバブル時と類似点があると指摘した。当時、ビットコインのシェアは約55%から35%以下まで下落した。暗号資産市場全体でのビットコインのシェアが正常化し、おそらく(2018年のように)50%以上になれば、現在の弱気市場は終わったと言えると考えている」
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:JPMorgan
|原文:Bitcoin Futures ‘Backwardation’ Points to Weak Institutional Demand: JPMorgan