ビットコイン(BTC)価格が史上最高値から約50%下落しているなか、強気のトレーダは、市場が底に近づいていることを示している可能性のあるデータに期待している。暗号資産(仮想通貨)取引所から多くの暗号資産が移動している。
移動が今後も続くかどうかの判断は時期尚早だが、データは、一部のトレーダーは現在の価格に満足しており、取引所でビットコインを清算するつもりがないことを示しているかもしれない。暗号資産市場のロジックで言えば、トレーダーは価格の反発を待っている間、ビットコインをウォレットやカストディサービス、コールドストレージに移している可能性がある。
データサイトのグラスノード(Glassnode)によると、6月7日には2万2550BTCが暗号資産取引所から移動、2020年11月2日以来の大きな移動となった。グラスノードは、バイナンス(Binance)、コインベース(Coinbase)、クラーケン(Kraken)をはじめとする、13の取引所からのビットコインの動きを追跡している。
「移動は、長期保有とDeFi(分散型金融)の別の側面を表しているといえるだろう」とグローバル決済ネットワーク、Mercuryoの共同創業者兼CEOのペトル・コジャコフ(Petr Kozyakov)氏は米CoinDeskに述べた。
取引所ウォレットのビットコイン保有残高は3週間ぶりに減少、256万から254万となっている。
投資家は通常、価格上昇を期待して買い持ちしようとするときに、ビットコインを取引所からウォレットに移す。
「投資家は、現在の価格下落が、前回の史上最高値に向かって、あるいはそれを上回る新たな価格上昇によってバランスを取ることを期待して、保有資産をハードウエアウォレットに保管しているようだ」とコジャコフ氏は付け加えた。
一部の投資家は、ビットコインを自身で保管・管理し、イーサリアムブロックチェーン上でトークン化して、利回りを手にしている。ここでのトークン化とは、ビットコインをイーサリアムブロックチェーンに預け入れ、ビットコイン価格に相当したトークンを得ることを言う。投資家は、トークンをDeFiレンディング(融資)サービスに預け入れることで利回りを得ることができる。
「DeFiに預け入れたビットコインによって、投資家は価格下落中に収益を最大化することができ、資産を遊ばせておきたくない多くの人にとって、より良い選択肢となる」(コジャコフ氏)
データサイトのDeFi Pulseによると、イーサリアムにロック(預け入れ)されたビットコインは、4月の9万4000BTCから現在は約17万4000BTCに増加している。
こうした他のネットワークでのビットコインのトークン化も、市場での供給量を減らす一因となっている。
すべてを考慮すると、中央集権型取引所からのビットコインの移動は、強気シグナルとなっている。だがクオンタム・エコノミクス(Quantum Economics)のジェイソン・ディーン(Jason Deane)氏は、慎重なアプローチを求めている。
「市場は現在、方向性を欠き、センチメント(市場心理)は入り乱れている。多くの指標は需要の低下を示しているため、この伝統的な強気シグナルは、他の指標と照らし合わせて慎重に解釈すべき」とディーン氏は述べた。
取引所からの移動は回復しているものの、「クジラ」と呼ばれる大口保有者の需要は活況とは言えない。1000BTC〜1万BTCを保有するクジラが保有するビットコインの合計は、今月3万5000BTC増加して418万3000BTCとなったものの、5月24日に記録した418万6000BTCを下回っている。
傷ついた市場の信頼を回復するためには、クジラが保有するビットコインの継続的な増加が必要かもしれない。大口投資家のビットコイン保有残高は、2020年10月から2021年4月までの強気市場の間、価格と連動して上昇していた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Glassnode
|原文:Crypto Exchanges See Biggest Bitcoin Outflow in 7 Months. A Reason to Cheer?