アップルは、同社最新のOS「iOS 13」のリリースに伴い、プログラミング言語「スウィフト(Swift)」用の、基本的な暗号処理を実行するAPI「クリプトキット(CryptoKit)」をローンチする。同社の年次会議、ワールドワイド・デベロッパーズ・カンファレンス(Worldwide Developers Conference)で発表された。
アップルによると、iOSアプリ開発者は、この新しいフレームワークによって、ハッシング、鍵の生成・交換、暗号化などができるようになる。アップルがこれまで提供していたフレームワーク「コモンクリプト(CommonCrypto)」はスウィフトに対応していなかったため、クリプトキットに取って代わられるだろう。
同社によると、クリプトキットはアプリに代わって、生ポインタの管理やメモリー解放中に機密データを自動的に上書きするため、開発者は低レベルインターフェースを使用する必要がなくなる。暗号化は、保存されている、もしくは送信中のデータに適用可能。
またクリプトキットは、暗号学的に安全なダイジェストの計算・比較、公開鍵暗号方式を使用したデジタル署名の生成・評価、メッセージの認証や暗号化をするための対称鍵生成などの一般的な暗号処理を提供する。
クリプトキットは、ハッシング機能を増やし、ハッシュ関数「SHA256」などには対応しているが、イーサリアムやその他ブロックチェーンが使用している楕円曲線暗号「secp256k1」には対応していない。これは、現段階において、仮想通貨にもたらされる恩恵は限定的だということを意味するが、仮想通貨愛好家は、希望を捨てていない。一方、その他開発者はそれほど楽観的ではない。
「iPhoneはハードウェアウォレットにならない!」とブロックチェーン開発者のロナルド・マンナック(Ronald Mannak)氏はツイッターで主張している。
仮想通貨ウォレット開発企業、ゼンゴー(ZenGo)の共同創業者、オーリエル・オハヨン(Ouriel Ohayon)氏も同意している。
「今のところ、(クリプトキットは仮想通貨にとってほぼ役に立たないです。なぜなら、ブロックチェーン用の楕円曲線暗号を使用していませんし、秘密鍵のエクスポート・移動が必要になったとしても、セキュアエンクレーブ(Secure Enclave)へのアクセスもないからです」
同氏は、「数年後には、アップルもこの道を進むだろうと私は見込んでいます。そして、それにより(仮想通貨)産業の環境はかなり良くなるでしょう」と前向きなコメントも残している。
翻訳:Yuta Machida
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真: Image via Shutterstock.
原文:Apple’s CryptoKit Launch Paves the Way for Secure Mobile Wallets