ナイジェリア中央銀行が暗号資産取引禁止令を実施する中、ナイジェリアの若者の多くにビットコイン(BTC)取引が広まっている。2021年の始め以降、ピアツーピア(P2P)のビットコイン取引高は2億400万ドルに増加し、アフリカ最大規模となっている。
ビットコイン分析企業のUsefultulipsが集めたデータによると、P2Pのビットコイン取引高において、ナイジェリアはアフリカのその他の地域を合わせた数をはるかに上回っている。例えば、過去180日間で、2位のケニアは合計8430万ドルで、ガーナは5980万ドルだった。
禁止令でもビットコインを求める若者
インターネットに精通したナイジェリアの若者の多くが、アフリカ最大のこの国における大きな技術的、社会的変化の時期に、資本の移動手段として暗号資産を活用している。自国通貨の価値の低下と、暗号資産に対して敵対的な政府によって、ナイジェリアはビットコインの大きな理想の実験場となっているのだ。
P2Pの暗号資産プラットフォーム「ルノ(Luno)」で、ナイジェリア担当のビジネス開発責任者を務めるチネドゥ・オビディエグゥ(Chinedu Obidiegwu)氏は、価格のボラティリティが高く、中央銀行によって暗号資産取引が禁止されている時期に、ビットコインの使用が増加していることについてこう語った。
「2021年2月のナイジェリア中央銀行による銀行に対する規制は、暗号資産エコシステムに対してかなりの衝撃だった。それにも関わらず、ナイジェリア人たちは暗号資産使用をむしろ増やし、知識を深めた。相場が強気から弱気へとシフトする中でも、代替オプションを提供する各プラットフォームでの数字にそのことが表れている」
バイナンス(Binance)のデータによると、アフリカ全体での同社P2Pユーザー数は、1月から4月に2228.21%と驚くほどの増加を遂げた。もちろんナイジェリアがその増加をけん引した。
パックスフル(Paxful)、FTX、Crypto.comを含むトップ暗号資産ブランドでも同様で、中央銀行が国内の銀行による暗号資産関連の取引処理を禁止する中、P2P取引は急増したのだ。
「新たな(中央銀行の)方針が発表されて以降、取引高は23%増加した」と、パックスフルのナイジェリア担当地域マネージャー、ネナ・ンワチュクゥ(Nena Nwachukwu)氏は語った。
ビットコイン取引の増加は、パンデミック中に従来型の経路を通じた送金が急激に減少したことに根差している。世界銀行によると、2020年のナイジェリアへの送金は27.7%減少した。
厳しい国内経済事情
ナイジェリアの法定通貨も、国民の助けとなってはいない。インフレ率の高まり(5月には17.93%)が、多くのナイジェリア人の購買力を低下させ、彼らは資産を守るために、ビットコインなどの代替オプションを求めている。ナイジェリアは、世界でも若年層の貧困率が最も高い国の1つだ。
政府によるビットコイン普及抑止の取り組みにも関わらず、暗号資産業界がナイジェリアで成長している理由の1つは、このような経済的困難だ。しかし、メリットは確かにあるが、ビットコインは魔法の万能薬ではない。
ルノのオビディエグゥ氏は、暗号資産を購入する時にナイジェリアの若者が直面する、コストと詐欺のリスクの高さを指摘した。
「残念なことに、ナイジェリア人の多くは、安全性や透明性がより低い、OTC(相対取引)に依存せざるを得ず、詐欺の被害に遭うリスクが高まり、金融活動の可視性も低まる。このことは、暗号資産取引禁止の理由として挙げられていた要素よりも、より重大な懸念事項であるべきだ」
取引プラットフォームの「Abokie.com」と「thebittle.com」の創業者エナキレルヒ・エジョブウォケ(Enakirerhi Ejovwoke)氏は、中央銀行による禁止にも関わらず、まだチャンスがあると語った。
「禁止は、ナイジェリアにおける暗号資産発展への障害というよりも、むしろチャンスとして捉えられた。現在、または将来ナイジェリアと同じような状況に直面する国々は、ナイジェリアを希望のモデルとして使うことができると信じている」
オルミデ・アデシナ(Olumide Adesina)氏は10年以上の経験を持つ、ナイジェリア在住の認定投資家である。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:ナイジェリア最大の都市・ラゴス(Teo-Inspiro International / Shutterstock.com)
|原文:Nigeria Is the Lion of Africa in Bitcoin P2P Trading