高まるインフレ率、ビットコインの買い時か?

7月14日に発表された新しい消費者物価指数によれば、インフレ率は13年ぶりの高水準となっている。消費者物価は前年比で驚きの5.4%増と、米連邦準備制度理事会(FRB)が経済的に健全ととらえる2%のインフレ長期目標をはるかに超えるものとなった。

一部のビットコイン(BTC)投資家はこれを、買いのシグナルととらえるかもしれない。ビットコイナーたちは長年、ビットコインは、どんな通貨でのインフレに対してもヘッジとして機能する可能性があると主張してきた。

その主張はしばしば、ビットコインの厳格に制限された供給量をその拠り所としてきたが、同じくらい大切なのは、単独の国家の経済や通貨から切り離された、ビットコインのグローバルな性質である。ビットコインの普及が進むにつれ、その根拠はさらに力強いものとなっている。

しかし、プロの投資家たちはインフレ率の高まりを受けても平静を保ったままのようで、ビットコインの反インフレテーゼを完全に信じているとしても、慎重さが必要だ。

動かない投資家たち

6月の消費者物価指数が発表される前には、機関投資家やその他の大口投資家たちは、今回のインフレは一過的なものというパウエルFRB議長の予測と同じ考えであった。驚きの数字が発表となっても、彼らは考えを変えてはいないようだ。債券利回りは基本的に変わらず、10年国債の利回りは1.35%へと若干減少した。

長期的インフレは、5〜30年まで様々な満期の債券からのリターンに食い込むため、債券市場はインフレに対する投資家心理を測る指標となる。投資家が長期的インフレを見込むと、債券が売られ、債券価格は下がる。そうなると、新しい買い手にとっては利回りが高まる。

そうすると今度は、インフレを見込んでショートポジションにあるカウンターパーティーが、その見込みに賭けて投資をするチャンスを手にし、その過程で新たなコンセンサスとしてのインフレ予想が生まれる。市場は時に、とても巧妙に機能するのだ。

しかし、13年ぶりのインフレ高水準にも関わらず、債券を売って、利回りを下げている人はほとんど誰もいない。なぜか?

一過性のインフレ?

現在のインフレ率高騰を懸念することに対する、基本的な反論は変わらない。新型コロナウイルスのパンデミックの一時的な影響だというものだ。インフレが一時的と考えれば、5年、10年国債ならば、保有し続けたままで大丈夫という結論になる。3カ月、4カ月のインフレ率高騰が、痛手になることはほとんどない。

(しかし、これは非常に大局的な解釈だ。ウォール・ストリート・ジャーナルでは、債券関連の見込みの様々な要素を検討し、利回りの低さは、FRBが年末までに金利を上げるという見込みを反映するものでもあると主張している)

今回の数字は前年比のものであり、昨年6月には、コロナウイルスパンデミックの真っ只中にいたことを考慮するのが鍵となる。当時アメリカの失業率は11.2%だったのだ。それに対し現在は5.9%だ。

株式市場さえも、3月の暴落から回復してはいなかった。そのため、当然のことながら、人々は支出を今よりずっと控えており、価格は押し下げられていた。前年比での現在の数字は、基準となる昨年の数字が低かったために、相対的に高く見えるだけなのだ。

さらにインフレは、コロナウイルスのパンデミックによる世界的混乱と、アメリカの経済活動再開に続いた需要の急増に関連するモノに極度に集中している。典型例は中古車だ。アジアでの半導体製造も含めた、複雑に絡み合った要因のために、中古車価格は昨年と比べて45.2%も高くなっている。中古車だけで、かつての基準よりも高い現在のインフレ率の、約3分の1を占めている。

これらの特定のカテゴリーの多くはすでに、通常に戻りつつある。卸売の自動車価格は先月値下がりし、小売価格は通常、卸売価格より1〜2カ月遅れて動くため、6月のインフレ率の大部分はすでに、もう消えていこうとしているのだ。

木材でも同様だ。4倍にもなった先物市場価格のために、4月のコモディティ界でインフレの話題となっていたが、価格は7月12日現在で、年初以来0.6%下がっている。

もちろんこれらの点は、インフレが終わることを決定的に意味するわけではない。FRBのインフレ予想が外れるのはこれで3カ月目なのだ。さらに重要なことに、消費者物価指数の計算方法が変更されたことにより、その数字に懐疑的になるかもしれない。

FRBに対する信頼を失い始めているか、そもそもあまり信頼していなかったとしたら、ビットコインをあなたのショッピングリストに含めるべき強力な経験的根拠は増加している。

最近のデータでは、ビットコインは債券利回りの高まりと同調することが分かっており、より幅広い市場で、パウエル議長の予測に対する考え方に変化があれば、債券利回りは急激に高まるはずだ。

デイビッド・Z・モリス(David Z. Morris)はCoinDeskのコラムニスト。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:Inflation Is Rampant. Is It Time to Buy Bitcoin?