報酬獲得型・NFTゲームは銀行口座を越える【オピニオン】

金融包摂の証として称賛されているのかもしれないが、銀行口座はそれを持たない人たちにとって、ほとんど意味のないものだ。

口座を持てる恵まれた人たちにとっても、銀行口座単独では必ずしも、競争力のある利子付きの預金口座やローン、保険など、実際に財政状況や経済的立ち位置を改善する役に立つような商品やサービスにアクセスできるようになる訳ではない。

私はフィリピンで生まれ育った。この国では、成人のわずか23%しか銀行口座を持っていない。フィリピンの中央銀行による金融包摂に関する2017年の調査では、銀行口座を持たない主な理由は、口座が必要なほどのお金を持っていないというものだった。

ひと月300米ドル強ほどしか収入のないフィリピン国民の大多数にとって、特に意味もなく残高に食い込む高額な手数料を伴うものとしか映っていないのだ。

「@YieldGuildが誕生した瞬間のツイート。@berylchavezliとOwlOfMoistnessとイールドファーミングをしているときに、もっと大きな大義のあるものへと高めようと決意した」
「@AxieInfinityをプレーし、SLPをファーミングすることで、ロックダウン中に貧困から抜け出した人たちがいる。力強い」
「そこで私は、あらゆる人に生活費、あるいは余剰収入を稼ぐオプションを提供することは、『非銀行利用者層に銀行サービスを提供する』という典型的なかけ声よりもさらに力強いということに気がついた」

時間やスキルなど、価値のある経済的リソースを提供することによって、先立つ資金を持たなくても、投資を行なって富を築くチャンスが人々にもたらされるべきだと、私は常に考えてきた。

お金という観点だけで考えることは、人々が経済にもたらす価値を見る方法としては非常に古臭いものだ。特に、デジタルインフラがアクセスのためのハードルを下げ、金融包摂という目標をこれまでになく達成可能なものにしているのだから。

暗号資産起業家としての取り組み

私は、2014年に設立されたフィリピンの暗号資産取引所とモバイルウォレット「Coins.ph」の創業期に客員起業家(Enterpreneur in Residence)として関わった。現在では1000万人以上のユーザーを抱えるプロダクトとなったが、私は当時、フィリピンの人たちが暗号資産を売買するのに必要な支払いルートを確立するために多くの努力を費やした。

例えば、銀行口座を持たない人は、地元のコンビニでeウォレットにフィリピンペソを入金する。それを使って、携帯電話のデータ通信プランを購入したり、請求書の支払いを電子的に行うことができる。

暗号資産がベースとなる送金は、伝統的な送金方法よりも時間もお金もずっと少なく済むため、国内および海外送金の効率性も高まる。当時、このような取り組みは画期的なもので、私たちの会社が与えた影響の指標として公式ウェブサイトに掲載していたのは、店頭での支払いのために列に並ばずに済んだ時間であった。

もちろんユーザーは、モバイルアプリを使って暗号資産の売買も可能であったし、今でも多くの人は、初めて投資ができたのはCoins.phのおかげだったと語ってくれる。

フィリピン国民は金融の自由に向けて大きなステップを踏んできているが、残された課題はまだまだ多くある。暗号資産ベースの経済は様々なチャンスをもたらすが、ユーザーは参加のために先立つ資金を持つ必要がある。人口の約5分の1が貧困ライン以下の生活をする国においては、それは多くの人にとっては超えられないようなハードルだ。

だからこそ、ノンファンジブル・トークン(NFT)ゲームをプレーして稼ぐというモデルは非常にパワフルなのだ。ユーザーは資金を注ぎ込む必要はなく、ゲームに参加することで報酬を獲得できるからだ。

NFT(非代替性トークン):ブロックチェーン上で発行される代替不可能なデジタルトークンで、アニメやゲーム、アートなどのコンテンツの固有性や保有を証明することができるもの。NFTを利用した事業は世界的に拡大している。

このことは、暗号資産の世界で富を築くチャンスに、特に、流行の波に乗りたいという人たちが多く流れ込んできている発展途上国において、かつてないほどのアクセスを提供する。

しかし、需要の高まりが、ゲームをプレーするのに必要なNFTのコストを劇的に上昇させた。ここで、振り出しに戻ってしまう。参加料が高いために、最もその恩恵を必要とする人たちにとって、報酬獲得型のゲームが手の届かないものになってしまうのだ。

NFTゲームを人々の手に

この問題こそが、私と共同創業者たちに、Yield Guild Games(YGG)立ち上げのインスピレーションを与えてくれた。何百万人ものプレーヤーをこの世界にオンボーディングするという目標を掲げ、私たちは最も期待できる報酬獲得型ゲームの利子を生むNFTへの投資を始めた。

そのようなNFTを、無担保のローンとしてメンバーに貸し付けることが目的だった。プレーヤーたちは、ゲームで獲得した報酬の70%を受け取り、20%はコミュニティー・マネージャーに渡る。コミュニティー・マネージャーは、競争力を保つためにプレーヤーを募ったり、オンボーディングさせるのが役目だ。

残りの10%は、ガス代を含めたNFTの獲得、およびそれらの安全な保管に係るコストをまかなうために、YGGが手にする。

「月曜日の数字:

2700万SLP(これまでの総額)=729万米ドル

1万5000のアクシー(NFT)
3300人強のプレーヤー

100万SLP獲得にかかる平均期間は2日間」

ゲームで「時間を過ごす」ことの意味が再定義されている。かつてゲームのアカウントは、ほとんど見返りもなしに、多くの時間を浪費するものであった。しかしいまや、NFTゲームによって、プレーヤーの時間とスキルには実世界におけるROIがある。収入を生み出し、富の構築に貢献し、貧困の呪縛と負債のサイクルを打ち破っている。

そして、それ以外の金融サービスや金融に関する教育を提供する手段ともなる。究極的には、報酬獲得型のゲームは、人々が生まれついた財政状況を乗り越えるチャンスを象徴するのだ。

YYGはすでに、メンバーが利子を生むNFTにアクセスできるようにしている。次のステップは、暗号資産借り入れをよりアクセスしやすいものにすることだ。特に、一般的な担保要件の問題を解消し、現在提供されていない資本へのアクセスを提供するために、有形資産のより少ない、発展途上国の個人や企業に対して。

さらに、プレー時間や、獲得したインゲーム報酬などのウォレットアクティビティのデータを、代替信用度採点モデルへの情報提供に使い、別の形態の無担保ローンにプレーヤーが申し込めるようにできるかもしれない。

ゲームと金融のこのような新しい交わりは、金融参加や富の構築についての私たちの考え方を、完全に覆している。報酬獲得型ゲームは、特権ではなく、時間とスキルに見返りを与え、促進するものなだ。ゲーム化された体験を通じて、コミュニティーは収入を生み出し、獲得した報酬を再投資し、経済的ステータスを高めることができる。

さらに、報酬獲得型NFTゲームは、代替金融サービスにアクセスするための入り口となり、金融リテラシーを高めるツールにもなり得る。さらに、学習、報酬獲得、投資を面白いものにしてくれる。銀行口座について、これほどの褒め言葉を耳にしたことがあるだろうか?

ベリル・リー(Beryl Li)はYield Guild Gamesの共同創業者である。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Axie Infinity
|原文:A Play-to-Earn Account Beats a Bank Account