8月に入ってビットコイン(BTC)が4万ドル付近で停滞する中、5日には大型アップグレード「ロンドン」を控えるイーサリアム(ETH)は勢いを失わなかった。
取引コストの高騰が問題となっていたイーサリアムにおいて、手数料システムの改善や供給量にデフレ圧力をもたらす改善案「EIP-1559」への期待が大きい。長期的には、イーサリアム価格にとって強気材料とみられているようだ。
クラーケン・インテリジェンスの今月のレポートによると、テクニカル面・資金面の双方からビットコインに対するイーサリアムの優位性は今後も続きそうだ。
イーサリアム需要はいまだに健在
今年これまでイーサリアムは、既存・新規の市場参加者双方から大きな注目を集めてきた。DeFi(分散型金融サービス)やNFT(ノンファンジブル・トークン)、PoS(プルーフオブステーク)、そして「ETH2.0」への移行と、イーサリアムは話題に事欠くことはなかった。そんな中で注目されたのが、ビットコインに対するイーサリアム価格のパフォーマンスだ。
2020年以降、ビットコインに対するイーサリアム価格は右肩上がりだ。数カ月前には過去最高値をつけた。とりわけ最近はテクニカル的なトレンド線を上回る上昇を見せている。
資金面でも明暗
またビットコインとイーサリアムの投資商品への1週間あたりの資金流入額を見てみると、ビットコインは4月と5月に大きな資金流入があって以降、資金流出に悩まされている。
イーサリアムへの資金の流れも似たようなトレンドを辿っているが、過去12週間でイーサリアムからの資金流出回数は6回のみである一方、ビットコインは10回を数える。
年初来からのビットコインへの資金流入額は5%のマイナスだが、イーサリアムはプラス9%だった。
今年後半もこのままイーサリアムのビットコインに対する優位性は変わらないかもしれない。ただ、イーサリアムの優位性は、歴史的に、ビットコインが強気トレンドにある前提で発揮されることを忘れてはならないだろう。
千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。
※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。
|編集・構成:佐藤茂
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