バイナンス・スマート・チェーンがイーサリアムを超えた──今、注目の「GameFi」とは?

あらゆるパブリックブロックチェーンがDeFi(分散型金融)におけるイーサリアムの優位性に挑戦しようとしたのは、まだほんの少し前のこと。イーサリアムベースのNFTゲーム「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)」があっという間に大成功した後、そうしたブロックチェーンは1000億ドル規模のゲーム業界で成功を収めている。

ブロックチェーン間の競争における最新エピソードは、暗号資産取引所バイナンス(Binance)がサポートするパブリックブロックチェーン「バイナンス・スマート・チェーン(Binance Smart Chain:BSC)」が以前、DeFiで起きたことと同様に、1日あたりの取引数で再びイーサリアムブロックチェーンを超えたことだ。

アクシー・インフィニティを上回るユーザー数

BSCが前回、イーサリアムを取引数で上回ったのは、DeFiブームの中でBSC上のDEX(分散型取引所)、パンケーキスワップ(PancakeSwap)が大人気となったため。だが今回の逆転は、BSC上のあまり知られていないゲーム「クリプトブレイズ(CryptoBlades)」によるものだ。

DappRadarによると、過去30日間のクリプトブレイズのユーザー数は62万1000人以上、一方、アクシー・インフィニティは27万1000人を少し上回る程度だった。

バイナンスのCEO、チャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏は7月31日に「バイナンス・スマート・チェーンは昨日、1000万件以上の取引を処理した。イーサリアムは120万件だった」とツイートした。

バイナンス・スマート・チェーンの1日あたりの取引数
出典:BscScan.com
同時期のイーサリアムの1日あたりの取引数
出典:Etherscan.io

「DeFiとGameFiは成長中」とジャオ氏は続けた。そして、BSCは1日あたり2000万件の取引を処理できるのかとの質問に対して、「(私は)専門家ではない。だが、すぐに分かると思う」と答えた。

この一連のツイートは、バイナンス・スマート・チェーン(BSC)でのゲームの成長に対するジャオ氏の興奮を示している。同氏はBSCはイーサリアムに挑戦するものではないとしていた。

Game+DeFi=GameFi

ところで「GameFi」とは? なぜ、さまざまなブロックチェーンがこの分野に殺到しているのだろう?

「GameFi」とは、ゲームとDeFiを1つにまとめた言葉で、金融の仕組みをゲーム化したもの。ユーザーはゲームをプレーすることで利益を得ることができ、「プレー・ツー・アーン(play-to-earn)」とも呼ばれる。

表面的には「ゲーム」がキーワードだが、コアな部分では「金融」が最も重要になっている。

バイナンスおよびBSCのユーティリティートークンである「バイナンスコイン(BNB)」と、バイナンスが提供している米ドル連動型ステーブルコインの「バイナンスUSD(BUSD)」は、どちらもBSC上のゲームで重要な役割を果たしている。

例えば、クリプトブレイズで使うネイティブトークン「SKILL」を購入するには、プレーヤーはまずBNBを購入し、BSC上のDEX(分散型取引所)のApeSwapでBNBをSKILLに交換しなければならない。つまり、BNBの需要とApeSwapの流動性は大きくなる。

また、ゲーム内でのキャラクターや武器の取引などには、一定の取引手数料をBNBで支払う必要がある。

ゲームの価値

バイナンス・スマート・チェーン(BSC)のエコシステムコーディネーター、サムサル・カリム(Samsul Karim)氏は、バイナンスコイン(BNB)はBSC上の多くのゲームで使われており、BSCに財務的な価値ではなく、「文化的な価値」をもたらしていると述べた。

イーサリアムのレイヤー2ソリューションを提供するポリゴン(Polygon)も、ゲームがポリゴンにもたらす経済的価値を優先したわけではないようだ。

ポリゴンは最近、ブロックチェーンゲームとノンファンジブル・トークン(NFT)に特化した組織「ポリゴン・スタジオ(Polygon Studios)」を設立した。同組織のシュレヤンシュ・シン(Shreyansh Singh)氏は、ポリゴンのガバナンストークン「MATIC」をポリゴンが提供するNFTやゲームで使用することは意図的なものではなく、より速く、より安価な決済手段を考えたときに自然な結果だったと述べた。

バイナンスとポリゴンだけが、ブロックチェーンを使ったゲームの可能性に注目しているわけではない。他の暗号資産企業やブロックチェーンも大きな一歩を踏み出している。

暗号資産デリバティブ取引所FTXは分散型ゲームのスタートアップ企業、Yield Guild Games(YGG)とのスポンサー契約をはじめ、複数のNFTゲーム関連の投資を発表した。

完璧な結婚とリスク

多くの暗号資産関係者にとって、ゲームと暗号資産の組み合わせは完璧な結婚に思えるようだ。

「暗号資産はマスマーケットでのユースケースを求めていた。ゲームは長い間、人気を集めている分野であり、暗号資産やブロックチェーンに詳しくない一般の人々が参加できる、暗号資産の最初の分野となる」と投資会社エフィシェント・フロンティア(Efficient Frontier)のアンドリュー・ツー(Andrew Tu)氏はCoinDeskに語った。

実際、アクシー・インフィニティは、Token Terminalのデータによると、過去30日で2億2000万ドル(約240億円)以上を稼ぎ出し、あらゆるDeFiプロジェクトとブロックチェーンの中でNo.1の収益をあげた。

出典:Token Terminal

暗号資産データ分析会社The Tieのジャスティン・バーロウ(Justin Barlow)氏は「アクシー・インフィニティはブロックチェーンベースのゲームの実用的なユースケースも示しており、この分野への新規参入者に道を切り開いた。アクシーの成功で大手ゲーム会社は数年のうちにこの分野に参入し、ブロックチェーンゲームを広く普及させるだろう」と語った。

盛り上がるGameFi業界だが、急速に成長していることでリスクもある。

「Yield Guild Games(YGG)のトークンセールが30秒で1250万ドル(約14億円)を集めたことは、市場参加者がホットな分野から別のホットな分野にスイッチすることに何の迷いも感じないことを示している。これは今年はじめのDeFiの熱狂と変わらない」とロンドンにあるクオンツ金融管理企業Synergia Capitalのデニス・ビノコウロフ(Denis Vinokourov)氏はCoinDeskに語り、いかなる結論を出すにも市場はまだ「初期段階」と付け加えた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Binance Smart Chain Beats Ethereum by Some Metrics Thanks to Latest ‘GameFi’ Craze