「エンタープライズブロックチェーン」とは、サプライチェーンで製品を追跡したり、国際的な決済を行うなど、大規模な事業プロセスを効率化するために利用できる許可型ブロックチェーンの一種である。
企業は、ビットコインのようなパブリックブロックチェーンネットワークよりも、エンタープライズブロックチェーンの方が自社のニーズに合っていると考えている。一部のユーザーだけがデータを見れるように制限できるからだ。
ブロックチェーンには様々なタイプが存在するが、すべては基本的に、集団で共有される金融取引のデジタル版の記録とデータである。過去の取引の履歴を悪意ある人たちが操作するのを困難にするために、暗号化技術が用いられる。
フェイスブック、IBM、JPモルガン・チェース、ウォルマート。これらの企業は、エンタープライズブロックチェーンを検討し、この最新テクノロジーをどのように活用して透明性を高め、既存の事業運営を最適化できるかを検証している大手企業の一例に過ぎない。
エンタープライズブロックチェーンについてのよくある質問
他のタイプのブロックチェーンの違いは?
エンタープライズブロックチェーンの大半は、許可型ブロックチェーン。つまり、企業が直接コントロールできるものである。例えば、自社のルールに従わない取引をブロックしたり、捜査機関の求めに応じて取引をブロックすることができる。
ビットコインの基盤となっているパブリック型の台帳と、許可型の台帳の最大の違いの1つがこれだ。パブリックブロックチェーンは、1つの企業や政府のコントロールの外に存在しており、検閲に対して耐性を持つ。そのため、ビットコインや他の暗号資産は、国際的な制裁を回避したり、国内での恐喝に対抗するために使われているのだ。
企業はその点に利点を見出している訳ではないが、多くの企業は、基盤となっているテクノロジーを使って、決済やその他の事業分野に大変革をもたらす可能性があると判断したのだ。
エンタープライズブロックチェーンの主な特徴のいくつかを下記にまとめた。
アカウンタビリティ:取引履歴のコピーを保有するネットワーク内の各ノードは知られており、その行為の説明責任を負う。エンタープライズブロックチェーンは時に、いくつかの企業や金融機関がシェアする。
許可型:許可を受けたユーザーのみがブロックチェーンを使うことができる。ネットワークオーナーが、使うことのできる人を選べる。
変更可能:ネットワークを管理するすべての関係者が合意すれば、データを変更できる。
スケーラビリティ:エンタープライズブロックチェーンは通常、ビットコインほどは分散化していないため、ベースレイヤーでより多くの取引に容易に対応できる。
エンタープライズブロックチェーンのタイプは?
エンタープライズはほとんどの場合、許可型で、次の2つのカテゴリーに分かれる。
プライベート:中核的な1つの当事者がネットワークのルールを決定し、好きに変更できる。この中核的当事者は、例えば新しい取引を検証するなどによってネットワークに貢献できるのは誰かを決定する。JPモルガンのJPMコインはこのカテゴリーに入る。
コンソーシアム:2つ以上の当事者が共同でネットワークのルールを決定し、それぞれがネットワークに貢献できる。フェイスブックが支援するデジタル通貨構想の「ディエム(旧リブラ)」はこのカテゴリーに入る。
企業はビットコインのようなパブリック台帳システムを使うこともできるが、大半の企業はそうしないことを選択する。マイクロソフトのアイデンティティ・プロジェクト「ION」はパブリック台帳システムを使う例外的存在だ。
エンタープライズブロックチェーンを使うことは会社にメリットがあるか?
ブロックチェーンは便利な可能性もあるが、あらゆる会社に必要な訳ではない。CoinDeskでは、いくつかの質問をまとめた図(英語)を用意した。
コンピューターサイエンスの研究者たちも、どのようなシナリオにブロックチェーンが最も適しているかを見極めるための、同様だがより改まった論文(英語)をまとめている。
どれくらい人気があるのか?
デロイトが2019年に企業を対象に実施した調査では、回答した企業の53%が「ブロックチェーンは2019年に、自社で極めて重要な優先事項となった」と答え、2018年と比べて10%の増加となった。
どのような暗号資産スタートアップや組織がエンタープライズブロックチェーンに取り組んでいるのか?
R3
ハイパーレジャー(Hyperledger)
エンタープライズ・イーサリアム(Enterprise Ethereum)
パクソス(Paxos)
デジタル・アセット・ホールディングス(Digital Asset Holdings)
どのような大手企業がエンタープライズブロックチェーンを検討しているか?
お馴染みの大企業もエンタープライズブロックチェーンテクノロジーを検討しており、取り残されたくないと考えている。
そのような企業の一例は以下の通りだ。
フェイスブック
マスターカード
IBM
インテル
ウォルマート
エンタープライズブロックチェーン導入において、企業はどのような状況にあるのか?
多くの企業が、長年にわたってエンタープライズブロックチェーンのメリットを検討している。しかし、このテクノロジーが世界を席巻するには程遠い。大半の企業はまだ試験段階にあり、リリース可能なバージョンを展開してはいない。
かつては、これらのソリューションに取り組む企業はおおむね競い合っていたが、最近では、その時と同じ企業の多くが、既存のブロックチェーンプロジェクトと連携している。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
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|原文:What Is an Enterprise Blockchain?