NFT(ノンファンジブル・トークン)市場の好況が続き、新しいプロジェクトが絶えず売り切れを出す中、オンチェーン分析企業のナンセン(Nansen)は先週、興味深いレポートを発表した。
そこから、イーサリアムにプロジェクトを送り出すアクティブなNFT開発者の数、そしてさらに重要なことに、「ドロップ(NFTのリリース)」によって獲得したイーサリアム(ETH)を彼らがどう利用しているかが明らかとなった。
このリサーチは、バブル崩壊が迫っているという懸念を落ち着ける一助となるかもしれない。大半の市場観測筋は、NFT部門は持続不可能なほどにバブル状態となっていると考えている。
そしてNFTコレクターの懸念の1つは、NFTの多くのドロップに伴って、開発者たちが清算を行い、実質的に市場から流動性が失われているというものだ。
ナンセンのアナリスト、リン・ヤング・ルーン(Ling Young Loon)氏は、市場の持続可能性を評価するために分析を始め、その結果は驚くべきものだったと語った。
「NFTエコノミーが自立的なものかを見極めたかった。CEX(中央集権型取引所)やDEX(分散型取引所)に多くの資金が流出しているとすれば、あまり健全ではない。資金がNFTコミュニティー内で流通しているのが理想だ」と、ルーン氏は説明した。
1日平均7ドロップのハイペース
ルーン氏の分析は、6月以降にリリースされた645のNFTに焦点を当てたものだった。過去3カ月の間、平均で1日に7ドロップという脅威的な数だ。これらのドロップにより、2億7100万ドル相当の約8万4000ETHの収益がもたらされた。
90日未満で2億5000万ドル以上というのは、一見すると脅威的な数字に見えるかもしれないが、ドロップの大半は比較的小規模のもので、1プロジェクト当たりの収益の中央値は、3万3000ドル相当の10.2ETHであると、ルーン氏は指摘。
「特に驚いたのは、非常に多くの小規模なERC-721が、楽しいサイドプロジェクトとしてローンチされながらも、成功しないという点だ」と、ルーン氏は語った。
プロジェクトが豊富に生まれる理由の1つとしてルーン氏は、参入障壁の低さを挙げ、次のように語った。
「プロジェクトをローンチするための技術的要件は、農園を始めるのに比べてはるかに少なく、多くの人が少しのお金を稼ごうとしているのではないかと考えている」
再投資
しかし、ルーン氏のリサーチの中でおそらく最も驚きのデータは、成功したドロップの大半が、収益として得たETHを保有しているか、別のNFTに再投資しているというものだ。
ルーン氏は、20ETH以上の収益を上げたドロップを分析した。開発者の52%が収益を新しいウォレットに移動させながらもETHのまま保有し、18%は別のNFT購入に使ったことを突き止めた。
開発者のETHウォレットがドロップによる収益のETHだけを使っているのかをルーン氏が追跡できなかったという点で、このデータは多少精度に欠けるが、「支出の割合は、収入を何に使うのかを象徴する指標となると推定できるだろう」と、ルーン氏は主張した。
開発者アドレスからの資産が最も多く流れ込んでいたのは、NFTマーケットプレースのオープンシー(OpenSea)で、その割合は22%。中央集権型取引所バイナンスが14%でそれに続いた。「清算」の可能性を示唆する、中央集権型または分散型の取引所に流れ込んでいたのは、収益のわずか24%のみであった。
最終的にルーン氏は、このデータが、NFT市場の全体的な健全性を示すと考えており、次のように語った。
「価値の流出は見られるが、このグラフに現れていないのは、価値の流入である。流入を把握するためには、オープンシーの1日のアクティブアドレス数、1日のアクティブ購入者数を見る必要があるが、それは上昇傾向にあり、流出を相殺するのに十分かもしれない」
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:mundissima / Shutterstock.com
|原文:Frothy NFT Market Remains ‘Healthy’ as Developers Hold ETH or Reinvest: Nansen