時価総額390億ドルを誇る柴犬をモチーフにした暗号資産(仮想通貨)、ドージコイン(DOGE)の基盤開発を支えるドージコイン財団(Dogecoin Foundation)は8月、イーサリアムの生みの親であるヴィタリック・ブテリン氏と、テスラのヤレド・バーチャル(Jared Birchall)氏をアドバイザーとして迎え入れると発表した。
DOGEの開発を正式なものとしてくれる財団の復活は、DOGEファンにとっては嬉しいニュースだ。しかし、ブテリン氏とバーチャル氏が加わったことは、暗号資産マイニングに関して、ドージコインのロードマップの将来を保証するための動きを示唆している。
ビットコイン(BTC)や現行のイーサリアム(ETH)と同様にドージコインも、エネルギー負荷の高いプルーフ・オブ・ワーク(PoW)マイニングを利用している。少なくとも今のところは。
「DOGEはおそらく、なんらかのパラレルチェーンを使って、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)を検証することになるだろう」と、事情に詳しい関係者は述べた。「しかし、仕上がりの予定日時はなく、内部での摩擦は存在している」
ブテリン氏は、イーサリアムのPoWからPoSへの移行を指揮している。PoSとは、特別なマイニング用コンピューターの蓄積に依存しない、コンセンサスメカニズムだ。
ブテリン氏は先日、ドージコインの「移行」の可能性についての見解を表明した。
Personally, I hope that doge can switch to PoS soon, perhaps using ethereum code. I also hope they don’t cancel the 5b/year annual PoW issuance, instead they put it in some kind of DAO that funds global public goods. Would fit well with dogecoin’s non-greedy wholesome ethos.
— vitalik.eth (@VitalikButerin) 2021年9月2日
「投資ファンドのスリー・アローズ・キャピタルのズー・スーCEO:イーサリアムとドージコインの協力に関して何か期待できるアイディアは?ドージのどこに興味を持ったのか?」
「ヴィタリック・ブテリン氏:個人的には、ドージがまもなく、PoSに移行することを望んでいる。それにはイーサリアムのコードを使うことができるかもしれない。1年間に50億ドージコインのPoW発行を取り止めないことも願っている。代わりに、世界的な公共財のための何らかのDAO(自律分散型組織)に注ぎ込めば良いと思う。ドージコインの欲深くなく健全な精神にピッタリだ」
多くの人を説得する必要
CoinDeskでは、ドージコインの中核的開発者ロス・ニコール(Ross Nicoll)氏と、コミュニティーリーダーのゲリー・ラチャンス(Gary Lachance)氏に、環境により優しいPoSシステムをロードマップに加えるというアイディアについての見解を聞いた。
「個人的には、(PoSを)検討するのは大歓迎だ」とニコール氏。「しかし、それがいつになるかを答えることはできない。他の人たちを説得する必要もある。だから、個人的には間違いなくイエスと答えられるが、財団としては、説得しなければいけない人がたくさんいる」
ドージコインのローンチは2013年にさかのぼる。ライトコイン(LTC)のフォークとして誕生したため、同じコンセンサスメカニズムPoWと、同じハッシュ機能Scryptを使用している。
ドージコインの開発者らは2014年、マージマイニング(同時に2つ以上の暗号資産をマイニングすること)を導入し、ライトコインのマイニングプールを活用することを決定したが、それは専門用語では「Auxiliary Proof of Work:AuxPoW」と呼ばれる。
ドージコインは値上がり前には、ライトコインマイニングの副産物と考えられていたのだ。(CoinMarketCapによると、現在のDOGEの時価総額は約390億ドル。一方のLTCは120億ドルである)
マイニングによるエネルギー消費
マージマイニング採用というドージコインの動きは、暗号資産業界で現在、中心的なテーマとなっているエネルギー効率のための譲歩と見ることもできる。
しかし、ラチャンス氏は、PoWとビットコインのエネルギー消費は、一部報道で伝えられるよりも微妙なものだと指摘する。
ラチャンス氏は、「ビットコインがアルゼンチンなどの国家と同じくらいの電力を消費するというような主張が多く見られた」と述べた上で、「それほど大量のエネルギーを消費しているかどうかは、微妙な議論だ。資源を枯渇させないようなシステムへの移行は大歓迎。しかし、安定した基盤を持つことも間違いなく大切だ。私にとっては、それが一番大切だ」と続けた。
マージマイニングを選んだ暗号資産の中に、AuxPoWから離れていったものはこれまで1つもないことは注目に値する。イーサリアムのPoSへの移行を見てみれば、それにまつわる複雑さのレベルは明らかであり、ドージコインが移行するとしたらどのように行うのかなど、様々な疑問が浮かぶと、ニコール氏は語った。
とりわけ、ネットワークが現在抱えるマイナーのための「何らかの道筋がなければならない。つまり、一定期間中にPoWとなれるブロックの最大数に限りを設けるかもしれないということだ。ハードウェアのコストを回収するための時間を与えるために、それが少なくなっていくだろうが、新しいハードウェアを買うことは勧めない」とニコール氏。
楽しさへの回帰
今のことろ、取引手数料の減少といった大切なタスクを完了させることや、開発のための資金が分配できるようなところまで財団をしっかりしたものにするなど、検討すべき優先事項が他にある。
ドージコイン財団の財政を完全に透明性のあるものにすることを意図したものだと、ニコール氏は説明する。現在議論されていることには、「ビールとピザ」のためのお金として始まったが、今では600万ドル規模に膨れ上がった開発者への「チップ入れ」を使うことなどが含まれている。
ニコール氏によると、財団の整備のためにチップ入れからこれまでに、25万DOGE(約7万5000ドル相当)が使われた。
最重要課題は、簡単で楽しく、万能な人々の通貨としての側面を強化することだと、ラチャンス氏は主張し、こうコメントした。
「だからこそ手数料の値下げは重要だ。他の通貨にとっては、そんなに大したことではないかもしれないが、現在の手数料は、誰かにDOGEを送るだけで、1DOGE。それは30〜40カナダセント相当だ。それが100倍安くなったら、誰かにDOGEをたくさん送ってあげるチップや分け与えの文化を取り戻すことができる。手数料はほとんどかからずに、楽しめるのだ」
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:With Buterin Advising, Could Dogecoin Jump to Proof-of-Stake?