SECによるDeFiへの調査、どう展開するか?

米証券取引委員会(SEC)が、分散型金融(DeFi)プラットフォームとそれを支える組織を調査していると報じられた。予想外の展開ではないが、暗号資産(仮想通貨)規制の世界における新しい段階である。

過去の大きな事例を振り返ることで、今後調査がどのように進んでいくかを予測することができるかもしれない。

DeFi調査

ナラティブ

ニュースが流れたのは9月3日。SECがユニスワップ・ラボ(Uniswap Labs)やその他のDeFiプラットフォームを調査していると報じられたのだ。この調査が主に情報収集を目的とするものなのか、実際に何か措置が行われるのかは分からない。

どちらにしても、予想されていたこととはいえ、暗号資産市場に対するSECの規制における極めて重要な展開だ。

なぜ重要なのか

SECのDeFiに対するアプローチは、DeFiプラットフォームがこの先、特にSECによる調査が成熟するに連れ、どれほど良く生き残っていけるかを決定するかもしれない。SECの調査に関して現時点で公開されているいくつかの詳細情報も存在するが、この先の展開を予測するために、過去を振り返ることもできる。

分析

SECは数週間にわたって、DeFiを検証すると示唆してきたため、実際に調査に踏み込んだというニュースは、まったく驚きではない。

すでに分かっていることをまとめてみよう。SECは、イーサリアム上で有数の分散型取引所(DEX)ユニスワップの開発元であるユニスワップ・ラボを調査していると報じられた。

DEXとは何か?様々な資産のプールを通じて取引をルーティングしているインターネット上のロボットと考えてみよう。仲介業者は必要ないのだ。その他の(名前は公表されていない)DeFiプラットフォームも、SECの調査の対象となっている可能性がある。

SECが何を求めているのか具体的にはまだ分かっていないが、DeFiや執行行為にどのようにアプローチするかを示唆するヒントを、過去の事例に見つけることができる。

DeFiを占う

ありがたいことに、SECのゲンスラー委員長はこれまでに数回にわたって、自らの見解を詳細に説明している。

最も最近では、欧州議会に対して、規制を受けたブローカーや、明快な投資家保護のルールが不足しているために、「投資する市民が(中略)脆弱な状態に置かれている」と語った。とりわけ詐欺やその他の犯罪行為に対してだ。

ゲンスラー委員長は過去に、DeFiプラットフォームを支えるソフトウェアを作り、そのガバナンスメカニズムを構築した「発起人やスポンサー」についても指摘した。これまでのところ浮かび上がっているポイントは、DeFiプロジェクトを生み出したり、支えたりする中央集権型プレイヤーに焦点を当てていることだろう。

つまりSECは、DeFiの分散型の部分を見ているのではないようだ。プロジェクト自体がローンチ後に十分に分散化されたとしても、プロジェクトが最も初期の開発段階で完全に分散型ではなかった場合、その支援者がまもなく調査を受けるかもしれない。

少なくともこれで、なぜSECがユニスワップを調査しているのかの説明がつくはずだ。

ユニスワップ・ラボの外部広報担当者は次のように述べた。「私たちは業界に対して適用される法律と規制を遵守すること、どのような調査でもその助けとなるような情報を規制当局に提供することを約束する」

さらに過去を振り返ると、SECはDeFiプラットフォームが実際にどのように機能するか、SECが証券とみなすトークンのための市場を提供したり、独自のオーダーブックを使っているかも検証するかもしれない。

過去の事例

参考となる過去の事例は、証券取引プラットフォームとして機能したとして、2018年にSECが告訴した分散型取引プラットフォームの「EtherDelta」だろう。

当時SECは、EtherDelatのスマートコントラクト、オーダーブック、オーダー表示ウェブサイト、そしてマーケットプレースを、違法な証券取引をサポートしていた証拠として挙げた。

SECはまた、同プラットフォームを立ち上げたが、告訴の1年以上前に組織を去ったザッカリー・コバーン(Zachary Coburn)氏も告訴した。

つまり、プラットフォーム自体が分散型だからといって、立ち上げに大きな役割を果たした中央集権的関係者をSECが告訴しないとは限らないのだ。

分散型金融プラットフォーム全般と、分散型取引所との間には境界線が引かれるかもしれないが、中央集権型の開発者や創業者の役割は、どちらでも際立ったものであることに注意したい。

結局のところ、SECが検討する可能性があることに含まれるのは以下の点である。

・投資家保護の懸念
・分散型プラットフォームにおける中央集権型関係者の役割
・トークンはSECの見解で証券かどうか

この先も目が離せない分野だ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Mark Van Scyoc / Shutterstock.com
|原文:State of Crypto: The SEC Takes on DeFi