最大規模のノンファンジブル・トークン(NFT:Non Fungible Token)市場「オープンシー(OpenSea)」の1日あたりの販売額は8月に記録したピークの3億2300万ドル(約355億円)から、9月9日には約5200万ドル(約57億2000万円)まで低下した。デューン・アナリティクス(Dune Analytics)のデータで判明した。
大幅な低下から、NFT市場のバブルは破裂したとの確信を強める人もいるだろう。だが複数のアナリストはNFT市場にはまだ活気があり、終わりはまだまだ遠いと述べている。
「このデータはNFTシーズンが終わったことを意味しているわけではない。まだ多くの注目を集めている」と暗号資産調査会社デルファイ・デジタル(Delphi Digital)のオン・ジュー・キン(Ong Joo Kian)氏は顧客向けレポートで述べた。
オン氏によると、8月後半には複数の注目プロジェクトがあり、販売額は「大幅に増加」していた。その後の低下は予想外ではなかったという。
似たようなプロジェクト
NFT市場は一時的に停滞しているだけで、次のビッグプロジェクトを探しているとの声もある。
データサイトのメッサーリ(Messari)のシニア・リサーチアナリスト、メイソン・ナイストロム(Mason Nystrom)氏は「プロフィール画像やアバターなど、特定のNFTカテゴリーはピークとなっている可能性がある。だがたった1つ、新しい、エキサイティングなプロジェクトがあれば市場は新たなピークを迎える」と述べた。
だがアナリストには、どのようなテーマのNFTが市場を活性化するのかわからない。最近の多くのプロジェクトは、ほぼ似たようなものになっている。
「話題のNFTを真似たものなど、似たようなアイデアのプロジェクトは増えている。だが新規の市場参加者は増えていない」とNFTプラットフォーム「StarryNift」の創業者、マーサ・ジャン(Martha Zhang)氏はコメントした。
1日あたりの販売額、90%以上低下
オープンシーによると、販売額が多かったNFTは「Loot」「CryptoPunks(クリプトパンクス)」「Bored Ape Yacht Club」だったという。だがCryptoPunksの1日あたりの販売額は90%以上低下した。
またNFTの価格情報サイトのNFT Price Floorによると、CryptoPunksのフロア価格は現在約90イーサリアムで、8月のピーク時の132イーサリアムから下落しているという。フロア価格とは、あるカテゴリー(この場合はCryptoPunks)内の最低価格のことだ。
オープンシーは8月、「Pudgy Penguins」をはじめとする人気NFTプロジェクトが次々と発表され、史上最高の販売額を記録した。
1万個の小さなデジタルキャラクター画像で構成されるCryptoPunksは、最も人気のNFTプロジェクトだ。CryptoPunksの販売額は、クレジットカード大手のVISAがCryptoPunksの画像1点を購入した直後の8月23日に過去最高を記録した。
イーサリアム・キラー
デルファイ・デジタルのオン氏によると、イーサリアムブロックチェーンが混雑するにつれ、一部のNFTプロジェクトがソラナなど、いわゆる「イーサリアム・キラー」と呼ばれる競合のレイヤー1ブロックチェーンに移行しているという。
この動きは結果的にイーサリアムブロックチェーンでのNFTの成長を遅らせる可能性がある。デューン・アナリティクスによると、オープンシーの過去24時間のガス代(イーサリアムの取引手数料)は1560イーサリアム(約547万ドル、約6億円)を超え、DeFi(分散型金融)プロジェクトなどを抑えて、依然としてトップを占めている。
ソラナなど、多くのレイヤー1ブロックチェーンは、イーサリアムよりも、高速で低コストの取引を実現しており、NFT市場にとっても魅力的な存在。暗号資産デリバティブ取引所FTXのアメリカ法人は最近、イーサリアムおよびソラナでのNFT発行プラットフォームの立ち上げを発表した。
「NFT市場は間違いなく成長を続けるだろう。成長スピードと、どれだけ変動するかだけが問題だ」とメッサーリのナイストロム氏は述べた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CryptoPunks(Larva Labs)
|原文:NFT Trading Volume Plummets but Analysts Say NFT Craze Is Far From Over