ワグミゴッチ──インセンティブも実用性もなく、NFTでもないデジタルペットが人気

話題の開発者によるサイドプロジェクトが多額の取引手数料を消費し、イーサリアムコミュニティの注目を集めている。だがインセンティブも目立った実用性もなく、人気の理由ははっきりしない。

かつて話題を集めた動画サービス「Vine」の共同創業者だったドム・ホフマン(Dom Hofmann)氏は、イーサリアムベースのプロジェクトや同氏が言うところの「実験」をいくつも成功させ、熱狂的な支持を集めている。先月、同氏が公開したテキストベースのノンファンジブル・トークン(NFT)プロジェクト「Loot(for Adventurers)」は現在、流通市場での販売額が2億ドルを超えている。

同氏の最新プロジェクトは、Lootほどの人気を集めることはなさそうだが、それでも、かなりの額の暗号資産を費やしている人がいる。

ホフマン氏は10日、いろいろな要求をしてくるデジタルペットを世話する「ワグミゴッチ(WAGMIGOTCHI)」のローンチをツイッターで発表した。万一、要求が満たされない場合は、ペットは死んでしまい、ユーザーはもう世話することはできない。

「ちょっとした新しい実験

チェーンを使うが、NFTではない」

「ワグミゴッチには、Boredom(退屈)、Uncleanliness(不潔)、Hunger(空腹)、Sleepiness(眠気)の4つの属性があり、50ブロックごとに増える」と同氏はCoinDeskの取材に答えた。

「Play(遊ぶ)、Clean(清潔にする)、Feed(餌を与える)、Sleep(眠る)というアクションは対応する属性をリセットできるが、ときに別の属性を増やすことがある。例えば、FeedはHungerをリセットするが、BoredomとUncleanlinessを増やす」

ホフマン氏が最初のバージョンを公開したわずか数分後、熱心なプレーヤーたちは誤ってワグミゴッチを死なせてしまった。「何度も続けてプレーしたので、ワグミゴッチは疲れて死んでしまった」とホフマン氏は述べた。

バージョン2

その直後、ホフマン氏はワグミゴッチのバージョン2をリリース。ワグミゴッチが簡単に死んでしまわないよう改良した。

ワグミゴッチは、すぐに史上最も高価なデジタルペットになるかもしれない。当記事執筆時点である公開後約16時間の時点で、プレーヤーたちは3000回以上アクセスし、13イーサリアム(ETH)以上(約4万4300ドル、約470万円)の取引手数料を費やしている。

だが、話題の開発者であるホフマン氏のプロジェクトに参加する以外に、ワグミゴッチを「世話」するインセンティブがどこにあるのか謎だ。デジタルペットを世話すると、「LOVE」を獲得できるが、これはトークンではなく、スマートコントラクトが記録する数字に過ぎない。

「ワグミゴッチ(WAGMIGOTCHI)」という名前も意味不明で、不可解なものだろう。

ワグミゴッチの語源は「We’re All Gonna Make It」という強気センチメントを示す投資関連で使われるフレーズと、90年代後半から2000年代前半にかけて人気を集めた「たまごっち」を組み合わせたものだ。

アドオンと模造品

これまでのホフマン氏のサイドプロジェクトと同様に、多くの開発者がアドオン(機能を追加するためのソフトウェア)や模造品の開発に乗り出している。例えば、ホフマン氏によると、ワグミゴッチの状況をモニターして世話するためのインターフェイスや、ワグミゴッチのスケーラビリティ向上、「LOVE」スコアのためのユーティリティなどの開発が進んでいるという。

取引手数料を考えると、スケーラビリティは特に重要な課題だ。

「こうしたプロジェクトは一般的にアーティスティックな実験であり、ネットワークの性質上やむを得ないことだが、取引手数料については個人的に罪悪感のようなものを感じている。将来のプロジェクトに採用することができるよう、他の選択肢を探している」とホフマン氏は語った。

だが取引手数料が高くても、人々はLOVEのためにクレイジーなことをする。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:WAGMIGOTCHIのWebサイト
|原文:Gas-Guzzling, Worthless On-Chain Pet Captivates Ethereum Community