一般的に強気指標とされる「ゴールデンクロス」がチャートに現れているにもかかわらず、ビットコイン(BTC)はこの1週間、マクロ経済的な不安に襲われている。
ゴールデンクロスとは、ある資産価格の50日移動平均線が、200日移動平均線を上回ることをいう。ビットコインでは9月15日、15カ月ぶりにゴールデンクロスが現れた。
しかしその後、ビットコインは12%下落し、当記事執筆時点で4万2000ドル付近となっている。
「市場は少し強気になりすぎたと思う」とギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)のCEO、マイク・ノボグラッツ(Mike Novogratz)はCNBCのインタビューで語った。
前回のゴールデンクロス(2020年5月)の後の11カ月で、ビットコイン価格は10倍の6万4800ドルまで上昇。そのため、今回のゴールデンクロスの後、市場センチメントはかなり強気になっていた。
マクロ経済的な要因が水を差している可能性がある。
株式やビットコインなどのリスク資産は今週はじめ、中国・恒大集団が債務不履行に陥り、市場に悪影響を及ぼすのではないかとの懸念から打撃を受けた。また、米連邦準備制度理事会(FRB)の次の動きが不鮮明なことで、一部のトレーダーは様子見となっている。
規制懸念も再燃し、ビットコインなどの暗号資産にさらに弱気圧力がかかっている。米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は21日、暗号資産規制に対する自らの意見をさらに強め、ステーブルコインをポーカーのチップにたとえた。
「中国のニュースは多くの人を怖がらせた」とノボグラッツ氏はCNBCのインタビューで述べた。
「FRBが登場して、ステーブルコインや規制について語ることを恐れていた。市場には多くの緊張感があり、多くの短期的リスクが押し寄せた」
この1週間の値動きを見ると、マクロ要因はしばしば、いわゆる「テクニカル分析」とは大きく違う方向に市場を動かす現実を思い出させる。
前回、ビットコインのチャートにゴールデンクロスが現れたのは、新型コロナウイルス感染拡大による影響を抑えるために、主要中央銀行が空前の景気刺激策を開始した頃だった。
多くのトレーダーやアナリストは、その年にビットコインが上昇したのは、資金が市場に溢れたからで、インフレ懸念が「デジタルゴールド」としてのビットコインに対する投資家の需要を後押ししたとためと述べた。
だが今回のゴールデンクロスは、FRBが量的緩和(QE)──月1200億ドルの資産購入による経済刺激策──の段階的縮小(テーパリング)をまもなく開始するのではないかという憶測を伴っている。
複数のFRB関係者は最近、年末までに危機時代の経済刺激策の巻き戻しを始めたいと発言している。
仮にFRBがより早い段階でのテーパリングを示唆したり、現在市場が想定しているよりも早い利上げを予定した場合、ビットコインは大きな損失を被る可能性がある。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:TradingView
|原文:Since ‘Golden Cross,’ Bitcoin Is Down 12%; Blame the Fed?