私は、私生活においても、公共問題における姿勢においても、献身的な環境保護主義者である。
5年間にわたって車は所有しておらず、再生可能エネルギーで自宅のエネルギーをまかなうために余分に高い電気料金を支払い、使い捨てプラスチックの利用を最小限にするためにできる限りのことをしている。汚染の規制のために、はるかに厳しい対策を政府がとるのも大歓迎だ。
このように言ったのは、自分で自分を褒めるためではなく、ビットコインネットワークの環境負荷に関する批判はあまりにバカげていて、その誠実さを疑うほどだと主張する時に、私の見解をしっかり分かってもらうためだ。
何カ月にもわたって、その核心にある驚くべき非論理性を説明するために計画を練ってきた。しかし運よく、私に代わってそれをしてくれる素晴らしいドキュメンタリーが登場した。
『This Machine Greens』は、ビットコインに対する環境面での批判を読み解く40分間のドキュメンタリーだ。
ビットコイン自動購入プラットフォームのSwan Bitcoinが提供し、プロデューサーを務めるのはエンリケ・ポズナー(Enrique Posner)氏。スペインのワーナー・ブラザーズの元マネージングディレクターだ。
監督はドキュメンタリー界のベテラン、ジェイミー・キング(Jamier King)氏。ピアツーピアファイルシェアリングについての2006年のドキュメンタリー作品『Steal This Machine』がおそらく最も有名だろう。キング氏がビットコインについて知ったのは、ピアツーピアテクノロジーを使った映画流通プラットフォーム「VODO」の初期の頃である。
「ビットコインを非常に初期に知っていたことは、私にとって大いなる恥だ」と、キング氏は述べる。「最初の数年で、導入していた。VODOがスタートしたのは2008年で、2011年には(ビットコインで)実験していた。しかし、保有し続けることはなかった」
「それは書かなくていいよ」とキング氏は言ったが、書かせてもらった。取材で語ったことは、公表が前提だ。
非論理的な批判
CoinDeskの読者なら、もうすでにおなじみだろう。ビットコインネットワークはワシントン州より多くの電力を消費したり、アルゼンチンやアメリカン航空よりも多くのエネルギーを消費するという主張は。
ハッシュパワーの39%は、再生可能エネルギーによってまかなわれているとしたケンブリッジ大学の調査など、このような主張を反証するデータは存在するが、そのような数字はマイナーの自己申告であり、おおむね役立たずだ。
しかし、私をここまで憤慨させるのは、このような批判の基盤となっている論理的誤りの多さである。
『This Machine Greens』では、最もひどいものを最初に取り扱っている。「エネルギー使用」そのものが悪だという考えだ。「文明におけるあらゆる進展は、火から風車に至るまで、(中略)エネルギーを捉え、利用することにおける新しいイノベーションにかかっていた」と、キング氏は話した。
このドキュメンタリーは、利用可能なエネルギーの活用度に従って文明をランク付けするカルダシェフ・スケールの考えを参考にしている。
地球においては、太陽の力を利用する方法を学び始めたばかりであり、活用されるのを待つ、無駄にされているエネルギーがまだまだ驚くほど眠っているということだ。壮大な見地に立ってみれば、エネルギー削減を目指すのではなく、より多くのエネルギーを使うことを目指すべきなのだ。
もちろん、地球温暖化という問題もある。ビットコインのエネルギー消費に対する批判の多くにおいて省略されている前提は、現在使われているエネルギーの大半が、炭素を排出するものだという考えだ。
しかし、『This Machine Greens』は、3つのポイントを指摘して、完全に反対の主張を説得力を持って展開する。
まず、ビットコインマイニングの収益性は、電気料金に大きく左右される。再生可能エネルギーは現在、電気を作るのに最も安価な方法だ。そしてビットコインマイニングには、地理的な制約がない。さらに、ビットコインシステムは、再生可能エネルギーを求め、開発するためのインセンティブを生み出す。
他の業界はどうなのか?
「ビットコインはエネルギーを使い過ぎる」という主張で、私が頭に来るもう1つの点は、他の金融ツール、そしてそれらを運営する人たちは、なぜか魔法のようにエネルギーを使わないかのように語られることだ。
数字は文脈の中で提示されるべきというのは、金融やビジネスの報道における基本原則であるが、多くのメディアはビットコインの場合には例外としているようだ。『This Machine Greens』は、そのような誤りを正す明白な真実を説明する。既存の通貨システムはすでに、大量の炭素を生み出しているのだ。
さらには、ビットコインの「プルーフ・オブ・ワーク」システムは、「浪費される」労働力や資源に基づいた通貨生成という、はるかに長く続く遺産の一部であると主張する。
それは、偽物を作るのを難しく、あるいは困難にするような交換の手段を作るために、大量の資源と専門の人材を必要とする金の採掘にも、北米先住民族の貝殻玉にも、ヤップ島の石貨にも当てはまる。貝殻玉の場合には、「生産的」仕事の代わりに、先住民の村がすべて貝殻玉作成にばかり集中するという、擬似工業生産に依存することになったほどだ。
「唯一の違いはその規模だ」と、キング氏は指摘し、次のように続けた。「先住民が貝殻玉を作ることに問題がないと考えるなら(中略)ビットコインも同じことだ」
現代においては、ドルとエネルギー使用の関係はさらに悪質だ。『This Machine Greens』によると、米ドルを基軸とした金本位制を確立したブレトン・ウッズ協定は、石油価格をドル建てで表示するOPEC諸国との合意と密接に関係していた。これが「オイルマネー」を生み出し、アメリカによって何十年もの間、膨大な軍事支出によって守られてきた。ちなみに、F-16戦闘機は太陽光では飛ばない。
『This Machine Greens』では、反論ほどしっかりしてはいないが、規模の問題でも修正を試みている。主流メディアの見出しは、小国とビットコインを比べてばかりいるが、クルーズ業界はビットコインの2倍のエネルギーを使う。あるいは、素早く立ち上げるためという一瞬の利便性のために、常にオンモードのデジタルデバイスは、ビットコインの12倍のエネルギーを使うということを知ったら、ずいぶんと印象が変わってくるだろう。
ところでこれは、クルーズ業界による汚染を控えめに言ったものだ。多くのクルーズ船はいまだに、黒いタールのような見た目で、燃焼時に大量の粒子を排出する、超安価で超低品質の海洋ディーゼル、バンカー重油を使っている。
このような粒子は米環境保護庁(EPA)によっては温室効果ガスと分類されておらず、気候変動に関する京都議定書のもとでは国家の総排出量の一部として計算されない。これは事実上、地球上で空気を吸うあらゆる人間を犠牲に、クルーズ業界が大いに得をしているということなのだ。
その代わりに私たちが受け取るものと言えば、世界で最も怠惰で過保護に育てられた人たちに「旅行中」という錯覚を与えるために作られた、コーンシロップを100通りに調理したビュッフェ付きの海に浮かぶ安物のホテルである。
私なら、地球温暖化を止めるためにクルーズ船を今すぐ禁止すべきだと言う。悪趣味なクルーズ船の残骸を海に沈めて、死にかけの珊瑚の代わりにすれば、人的資本と資源の巨大な浪費から、少なくとも何か意味のあるものが得られるだろう。
価値のないエネルギー使用?
しかしそのような主張は、避けられないハードルにぶつかる。本当にクルーズが好きな人なら、バンカー重油を燃やすのにも価値があると考えるかもしれない。同じように、ビットコインのエネルギー消費に対する批判の大半は、根拠もなしに、エネルギーが浪費されているという前提に立っているのだ。
本質的には、エネルギー使用について語ることは、「ビットコインは単なる詐欺だ」という主張が日々擁護できないものになっている現状で編み出されたトリックなのだ。
「ビットコインが(社会的)価値を持つと考えていないならば、このようなエネルギー(使用)が優れたエネルギー方針だと説得することはできない」と、プロデューサーのポズナー氏は述べる。
究極的にはそこが、ビットコインのエネルギー使用に対する批判において、最も腹立たしく、バカげた要素である。
効率性というものは存在するし、私もできる限り少ないエネルギーを使用することには大賛成だ。しかし、どの電力使用が『許容できるもの』かを議論することは、意味がないどころか、危険なのだ。
人間としての私たちは、大いに相反する優先事項を抱えており、個々の費用対効果分析の合計に応じて、民主社会は社会的優先事項を設定する。
ビットコインのエネルギー使用を批判する人たちは、「許容できる」エネルギー使用を定義し、強制してくれるフレンドリーな権威を想像しているようだが、そのようなシステムを表現するのには、いくつかの強烈な言葉が浮かぶはずだ。
オイルマネーの操り人形か、完璧なバカものでない限り、現在本当に焦点を当てるべきなのは、気に入らない消費を禁止することではなく、エネルギー生産にあることを理解できるだろう。
ビットコインのエネルギー使用に関して、懸念を装った記事がもっと書かれた方が良いだろうか?それとも、化石燃料生産を助成するために、1年間に世界中の政府が5000億ドルも使うことに関してか?あるいは、石油関連企業シェブロンに対する環境破壊をめぐる訴訟に勝った弁護士を痛めつけるために、アメリカの裁判所が堕落してしまったことはどうだろう?本当に問題なのは、どちらだろうか?
ファイナンシャル・タイムズやニューヨーク・タイムズは、答えを全部知っているようだが。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:We Can Use as Much Energy as We Want, Forever