単一、あるいは複数のくじら(ビットコインの大口保有者)が6日の価格上昇をもたらしたようだ。ブロックチェーンデータはアメリカの取引時間が始まった頃に、取引所で大量のビットコインが購入されたことを示している。
だがなぜ、くじらが中央集権型取引所で数分のうちに約16億ドル(約1800億円)もの買い注文を出したのかはわからない。
韓国のブロックチェーンデータ会社CryptoQuantによると、協定世界時6日13時11分〜16分の間に中央集権型取引所のスポット(現物)市場で大量のビットコイン購入があったという。
この購入タイミングは、米共和党議員が暗号資産に好意的なコメントを発した直後であり、米証券取引委員会(SEC)が先物ベースのビットコインETF(上場投資信託)を近く承認するのではないかという期待がマーケットで高まっているときだった。
コインベースか、バイナンスか
購入はコインベース(Coinbase)で始まったようだとCryptoQuantの共同創業者兼CEO、キ・ヨン・ジュ(Ki Young Ju)氏は述べた。同氏は「コインベース・プレミアム」が同じタイミングで急上昇した後、下落したことを指摘した。
「コインベース・プレミアム」とは、コインベースのビットコイン/米ドル(BTC/USD)ペアと、バイナンス(Binance)のビットコイン/テザー(BTC/USDT)ペアのギャップを示す指標。数値の上昇は、通常、コインベースの購買力が強くなったことを反映し、機関投資家の需要が高くなっていることを示しているとされる。
だが独立系のブロックチェーン・データ・アナリストのウィリー・ウー(Willy Woo氏の見方は異なる。ウー氏はグラスノードのデータを使い、購入はほとんどがバイナンスで行われたと述べた。
グラスノードによると、コインベースに入るビットコインと出ていくビットコインの差を1時間ごとに見ると、バイナンスよりも中立的になっている。
一方、バイナンスでは、取引所に入るビットコインと出ていくビットコインの差は先週末からマイナスになっている(つまり、出ていくビットコインの方が多い)。
「コインベースからのビットコインの移動は見ていないし、買いも他の取引所と同程度だった。買いは実際、バイナンスの方が強かった。コインベースは買いよりも売りの方が多かった」とウー氏は述べた。
マイアミのブロックチェーンデータ会社IntoTheBlockのリサーチ責任者、ルーカス・アウトミュロ(Lucas Outumuro)氏も、自社データを引用して、買いは主にバイナンスからだったと述べた。
店頭取引ではなく、なぜ取引所?
ビットコインを急騰させたような大量注文がどの取引所で行われたのかはさておき、問題は購入がなぜ取引所で行われたのかだ。ビットコインの大量注文は、通常、店頭(OTC)市場で行われる。そのため、価格に影響を与えることはほぼない。
スポット(現物)市場での大量購入は、市場を大きく動かす可能性があり、CryptoQuantのJu氏は疑わしい行動と考えている。ジュ氏は、くじらが価格を上昇させることで、他の投資家の関心を集めようとしているのではないかと考えている。価格上昇で投資家はチャンスを逃すことを恐れるようになる。
「FOMO(機会を逃すことへの恐怖:fear of missing out)を抱かせるためには、ときに価格を操作しなければならない」(ジュ氏)
しかしアウトミュロ氏は、店頭取引での大量購入は時間がかかりすぎることがあると述べた。
「ビットコインが数カ月にわたる横ばい傾向を抜け、当面の高値となったことを考えると、スポット市場で大量取引があっても不思議ではない。取引高も多く、納得できる」(アウトミュロ氏)
実際、マーケットの関心は、完全に強気モードのビットコインに戻っている。ビットコインが6日、5万4000ドルを超えたことで、機関投資家の関心も非常に大きくなっている。
デリバティブ調査会社のスキュー(Skew)によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のビットコイン先物は、スポット(現物)価格に対して年率17.73%ものプレミアムで取引されている。
これはトレーダーの間でビットコインのロング取引(買い持ち=強気の投資)への需要が高まっていることを示している。暗号資産市場では、アナリストやトレーダーはCMEを機関投資家の代名詞と見ている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Price Rally Fueled by Whales’ $1.6B Buy, Blockchain Data Shows