世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)は12日、バイナンス・スマート・チェーン(Binance Smart Chain:BSC)の成長を後押しするために10億ドル(約1140億円)を投資すると発表した。およそ1年前、バイナンスは1億ドルを投資してBSCをスタートさせた。
「BSCは、1億ドルの初期投資でちょうど1億人以上のDeFiユーザーを引きつけた。10億ドルの新たな資金で、伝統的な金融を破壊し、デジタル資産のグローバルな普及を加速させ、10億人のユーザーを抱える史上初のブロックチェーン・エコシステムを目指す」とバイナンスのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)CEOはプレスリリースで述べた。
ニュースリリースによると、10億ドルはBSCのエコシステムにおける4つの主なカテゴリーに充てられる。すなわち、
●開発者コミュニティや暗号資産投資家のなかでの人材育成
●新規ユーザーにBSCを試してもらうためのインセンティブ・プログラム
●グローバル・ハッカソンを含む技術サポート
●さまざまな新規プロジェクト向けのインキュベーション・プログラム、の4つだ。
加熱する「イーサリアム・キラー」競争
レイヤー1ブロックチェーンの競争が過熱するなかで、ソラナ(Solana)、アバランチ(Avalanche)、ファントム(Fantom)など、他の多くのブロックチェーンプロジェクトは多額の予算をつぎ込んだインセンティブ・プログラムを打ち出している。
「ますます多くのプロジェクトが分散型の世界に参加していることをうれしく思う。BSCはすべての成長しているエコシステムのためのプラットフォームであり、あらゆる人に参加してもらいたいと考えている。ここには競争はない」とBSC Accelerator Fundの投資ディレクター、グウェンドリン・レジーナ(Gwendolyn Regina)氏はコメントした。
ブロックチェーンの普及のために大規模なインセンティブ・プログラムを打ち出したのはバイナンスが最初だった。BSCは今では「イーサリアム・キラー」の1つとして大きな注目を集めている。
BscScanのデータによると、10月10日現在、BSCは約9890万のユニークアドレスが存在し、1日あたりの取引件数は約630万件となっている。一方、Etherscanのデータによると、同日のイーサリアムのユニークアドレスは約1億7200万、1日あたりの取引件数は約110万件。
成功と批判
BSCの成功は、イーサリアムブロックチェーンがあまりにも混雑し、取引手数料、いわゆるガス代が急上昇したことが要因。一方でBSCは、競合よりも分散性や安全性が低いという批判を受けている。
今年、BSC上に構築されたDeFiプロジェクトで「ラグプル」と呼ばれる不正行為が増えている。BSCのセキュリティ・アルゴリズムは「Proof-Of-Staked Authority(PoSA)」と呼ばれ、わずか21のノードオペレーターによってコントロールされている。ジャオCEOは以前、イーサリアムに対抗するうえで、分散性を犠牲にすることは避けられなかったと語っている。
セキュリティに関する懸念から、パフォーマンスも低下している。BSCは、預かり資金(TVL:Total Value Locked)では依然として第2位を占めているが、5月初旬に記録した高水準からは大きく減少している。
「10億ドルを投下した取り組みにとって、我々の焦点は、さまざまなタイプのブロックチェーンをインテグレートしたクロスチェーン、かつマルチチェーンのインフラストラクチャの構築に広がる」とレジーナ氏はリリースで述べている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:バイナンスのチャンポン・ジャオCEO(CoinDesk archives)
|原文:Binance Dedicates Another $1B to Smart Chain Project