米ドルに連動するステーブルコイン「USDC」を発行する米サークル(Circle)が、同社グループのベンチャーキャピタルを通じて、日本円連動型ステーブルコインを手がけるJPYCへの出資を行った。
関係者によると、JPYCは今回のラウンド(シリーズA)で、約5億円を調達。サークルのVC部門であるCircle Venturesが参画し、ベンチャーキャピタルのHeadline Asiaが同ラウンドをリードした。
JPYCが発行するステーブルコイン「JPYC」は、「自家型前払い式支払い手段」と呼ばれる設計で、USDCやテザーなどの米ドル連動型ステーブルコインとは異なり、暗号資産(仮想通貨)に該当しないため、1JPYC=1円として会計処理できるのが特徴だ。
イーサリアムのトークン規格「ERC-20」として発行され、1JPYC=1円でJPYCのサービスを利用することができる。イーサリアムやポリゴン(Polygon)、Shidenなどのネットワーク上で取引することが可能だ。
ステーブルコイン:価格を安定させるためにその価値が法定通貨や金(ゴールド)など、別の資産クラスにペッグされている暗号資産のこと。その価値を法定通貨などの安定した資産と連動させることで、価格変動の問題に対処している。
通常、ステーブルコインを手がける組織は、ステーブルコインを裏付ける単独の資産や資産のバスケットを安全に保管する「準備資産」を用意する。例えば、100万枚のステーブルコインを裏付けるために、昔ながらの一般的な銀行に100万ドルを保管するという具合だ。
JPYCの利用方法
JPYCは調達した資金で、日本国内でJPYCを利用できる加盟店を増やしていく計画だ。「第三者型前払い式支払い手段」となるJPYCを利用することで、加盟店は決済手数料を大幅に削減することが可能になるという。
また、暗号資産を保有する消費者にとっては、JPYCを利用した支払いがより容易になると、JPYCは説明する。例えば、イーサリアム(ETH)を保有する利用者がイーサを法定通貨に現金化すると、比較的に高い税金が課されるが、イーサを担保にしてUSDCを取得し、USDCとJPYCをスワップすれば、JPYCを使って買い物をすることができる。
所定の金利はかかるものの、イーサの値上がり局面では税金の繰り延べ方法として、海外の資産家には知られた手法を日本円経済圏でも享受することが可能となる。自動スワップでJPYCの価格安定を図る「JPYC Stabilizer」がユーザー主導で稼働しているなど、JPYCのエコシステムは徐々に広がりはじめている。
JPYCは今年初めにJPYCの発行を開始。流通量は現在までに、3億円を突破している。JPYCによると、同社は資金決済法に基づき、年2回未使用残高の半額相当を供託金として積み上げ、法務局に預けている。
サークルは2013年の設立以来、ピアツーピア決済の技術開発を進めてきた。マサチューセッツ州ボストンに本社を置き、2018年には暗号資産取引サービス大手のコインベース(Coinbase)と共同で、USDCの管理を行っている。
また、サークルは7月に、特別買収目的会社(SPAC)であるConcord Acquisitionとの合併を通じてニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する計画を発表。合併後の時価総額は45億ドル(約5115億円)と見られている。
|テキスト・編集:佐藤茂
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