ビットコイン(BTC)は8日、6万6000ドルを超え、10月20日に記録した史上最高値6万6975ドルに迫る勢いを見せた。6万ドル付近で推移した約3週間の横ばい状態は終わった。
イーサリアム(ETH)も協定世界時(UTC)1:00頃、4700ドルを超え、史上最高値を更新した。
強いインフレ懸念
暗号資産(仮想通貨)取引所ビットバンク(bitbank)のアナリスト、長谷川友哉氏は「インフレ懸念による米国物価連動国債利回り(実質金利に相当)の低下がビットコイン上昇の要因だろう」とコメント。米財務省のデータを見ると、米国債10年物の実質利回り(インフレ率を引いた利回り)は5日、マイナス1.09%まで低下し、8月30日以来の低水準となった。
ビットコインは価値保存機能を持つ「デジタル・ゴールド」として認識されており、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、インフレ圧力は一時的なものだろうと繰り返したが、インフレがコントロールを失うことへの懸念は根強い。
米暗号資産取引サービス大手のコインベース(Coinbase)は5日発行した週刊メールに「インフレシナリオは依然として強く、世界中がピンチを感じている。アメリカのガソリン価格、ヨーロッパのエネルギー価格、ラテンアメリカの食料価格など、サプライチェーンの制約と労働力の減少という逆風のなか、投資家は価値あるものを求めている」と書いている。
各種データも強気サイン
各種データもビットコインの中長期的な強気サインを示していると暗号資産取引所OKExのデータリサーチ部門OKLinkのエディ・ワン(Eddie Wang)氏は述べた。
ワン氏によると、ビットコインのハッシュレートは7月から上昇を続け、マイニング事業者のビットコイン保有残高は9月以降、3000ビットコイン以上増加しているという。
またワン氏は、保有残高が0(ゼロ)ではないユニークウォレット数は3900万を回復して、過去最高を記録した5月の3928万に近づいており、市場のポジティブなセンチメントを示していると述べた。
さらにビットコインに裏付けられた暗号資産やステーブルコインの増加も強気市場のサインで、ラップドビットコイン(WTBC)の発行高はこの1週間で6022、デザー(USDT)の発行高は11月5日、10億にのぼったと指摘した。
ブロックチェーン分析会社チェイナリシス(Chainalysis)のデータを見ると、大口投資家、いわゆる「くじら」は再び、ビットコインを買い集めている。1000ビットコイン以上を保有するくじらは、10月最終週に14万2000ビットコインを購入、保有残高は20万ビットコイン近くに達し、今年の最高水準となった。
スイスのCrypto Finance AGのトレーダー、ダニエル・クカン(Danile Kukan)は、ビットコインの今回の上昇は、資金調達率(永久先物市場でロング・ポジションを保有するコスト)が低いままであることから、現物(スポット)市場が主導している可能性が高いと語った。
Coinglass.comのデータによると、平均資金調達率は11月8日早朝に0.0250%となった。11月3日は0.0589%だった。きわめて高い資金調達率は、過剰な強気レバレッジを意味すると考えられている。資金調達率の上昇と横ばいの価格推移が重なると、トレーダーはロング・ポジションの縮小を迫られることが多くなり、価格下落につながる。
クカン氏は、ここ数週間の横ばい推移は、典型的な強気相場の一服と考えている。
「健全な横ばいであり、市場は短期的なサポートである5万8000ドルを試していない。これは強気サイン。7万ドルを超えたところで売りたいという動きが見られるが、私はむしろ、そのレベルをすぐに超えるのではないかと考えている」と同氏は付け加えた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinDesk
|原文:Bitcoin Tops $66K, Resuming Uptrend as Real Bond Yields Slide
※編集部より:本文を一部修正して、更新しました。