この週末、ビットコイン愛好家たちはPCの画面を見つめ、マイナーがビットコイン・ブロック709,632をマイニングする瞬間を待っていた。ブロックは米東部標準時15日午前0時過ぎにマイニングされ、待望の3つの技術的アップグレードが正式にビットコイン・ブロックチェーンに実装された。
3つのアップグレードは総称して「タップルート(Taproot)」と呼ばれている。
タップルートの目的は、ビットコイン・ブロックチェーンのセキュリティ、プライバシー、効率を向上させることだ。詳細については、以下の記事を参考してほしい。
誤解
タップルートにはもちろん、いくつかの潜在的なデメリットもあるが、メリットに比べればきわめて小さなものであり、かつ、タップルートがネットワーク参加者の一部にしか受け入れられなかった場合にのみ問題となる(現在、アップグレードを完了したビットコイン・ノードはまだ54%だが、この数日で増加している)。
また、タップルートがネットワーク参加者、ステークホルダー、そして投資家にとって、どのような意味を持つのかについてはいくつか誤解がある。その最たるものが、タップルートはイーサリアム・ブロックチェーンに匹敵する柔軟なスマートコントラクト機能を実現するという誤解だ。
タップルート以前のビットコインにもスマートコントラクト機能は存在し、ビットコインのトランザクションは、特定の条件を満たしたとき、あるいは満たさなかったときに実行されるようプログラム可能だった。
その代表例がライトニング・ネットワーク(Lightning Network)で、エルサルバドルではビットコインを使った商取引を実現するために使われている。しかし、ビットコインのスマートコントラクトは、データが重くなり、プライバシーに悪影響を及ぼす。
タップルートでは、スマートコントラクトがより簡単になる。とはいえ、タップルートによってビットコインがイーサリアムのようなスマートコントラクト・ブロックチェーンになるわけではない。
タップルートの意味
ユーザー、ステークホルダー、投資家にとって、タップルートが持つ意味は以下の2つと言える。
●ビットコインは、アップグレード可能なテクノロジーであることを証明した。「資産としてのビットコイン」というストーリーが人気を集めるなか、「テクノロジーとしてのビットコイン・ブロックチェーン」というストーリーもその後を追いかけている。ただし、前者を置き換えるものではなく、補強するものだ。
●タプロートは、将来の興味深いユースケースの基礎を築いた。
つまり、タップルートはビットコインの歴史において記念碑的なものだが、まだやるべきことがある。半減期のようなビットコインにとって重要な時期に登場する漫画が、それを見事に表現している。
漫画ではコンピューターの前に座った人物が、ブロックのマイニングを真剣な表情で見つめている。ブロック709,632がマイニングされると、彼は頭上で花火を上げるが、その後はまた真剣な表情で画面を見つめている。
IYKYK 🥕 https://t.co/TIiCSzv3dn pic.twitter.com/cdISlcyrOK
— Mining Memo (@miningmemo) November 14, 2021
つまり、ビットコイン・コミュニティはブロック709,632を短い花火で祝った。だがその後は仕事に戻った。いつも通り、次のブロックへ。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:What Taproot Could Mean for Bitcoin Investors