仮想通貨「リブラ(Libra)」を軸にして、誰もが送受金、支払い、資産構築ができる世界規模の金融システム構想。世界中から注目を集めるこの野心的な取り組みに対して、日本ブロックチェーン協会は6月24日、都内で勉強会を開いた。
フェイスブック(Facebook)が中心的役割を果たすリブラのホワイトペーパーによると、その通貨は数種類の法定通貨や短期国債がプールされたリザーブで裏付けされる斬新な設計だ。フェイスブックを含む28社がリブラ協会をスイスに作り、リブラの運営を独立して行なっていくという。
リブラは仮想通貨なのか?それとも通貨建ての資産と位置づけられるのか?通貨リブラをコアに置く新たなプラットフォームは、世界をどう変えていくのか?LayerX・CEO(最高経営責任者)の福島良典氏と創・佐藤法律事務所の斎藤創弁護士が勉強会で考えを述べた。
斎藤弁護士は、日本の法律では、リブラは仮想通貨に該当するだろうとの考えを述べた上で、2つの理由をあげた。
- 「(数種類の通貨)バスケットにリンクするのであって、特定の通貨にリンクするわけではない」
- 「リブラが償還されるときに、短期国債などの時価を踏まえて償還される」
資金決済法上の仮想通貨の定義からすると「本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建て資産を除く」の条文に該当しないため、仮想通貨に分類されるだろうと話した。
一方、福島氏はイーサリアムやビットコインに比して、リブラは「複数の信頼できる(28の)機関で牽制しつつ運用される金融ソフトウェアプラットフォーム」だと話した。
「スマートコントラクト上で扱える便利なステーブルコインはまだない。スマートコントラクトに乗るとコストを下げられるので、その部分で使われるかもしれない。通常の(法定)通貨のようにペイメントで使われる可能性は低い」と福島氏。
ブロックチェーン開発のConsensusBaseでCEOを務める志茂博氏は、フェイスブックの掲げるフィナンシャル・インクルージョン(金融包摂=金融システムの外にいる人をシステム内に取り込むこと)について言及。
「小国の人たちが、例えばユーチューバーになってSNS上で有名になり、稼げるコインがリブラであると、リブラで受け取ってリブラで支払うことになる。途上国の人たちをインターネットに引き込み、フェイスブックなどのサービスを使わせる方向性が考えられる」
また、志茂氏は「小国がリブラの利用を禁止する可能性は高いだろう」とする考えも加えた。
文・写真:小西雄志
編集:佐藤茂