暗号資産の希少性について知っておくべきこと【オピニオン】

ビットコイン(BTC)が全国ニュースで取り上げられる理由はますます増えてきたが、その中でも希少性は、最も特筆すべきものの1つだ。

JPモルガン・チェースなどの大手銀行もインフレヘッジと形容するビットコインは、アメリカ財務省が法定通貨の増刷を続ける中、「デジタルゴールド」としての評判を新たにしている。

「すべてではないが、大半の暗号資産(仮想通貨)とすべてのNFT(ノン・ファンジブル・トークン)は、価値提案の重要な要素として、その希少性を持っている」と、ブロックチェーン広報企業トランスフォーム・グループ(Transform Group)の創業者兼CEO、マイケル・ターピン(Michael Terpin)氏は話す。

ビットコインとイーサリアム

「固定供給がもたらすビットコインの希少性は、最も高く評価されている。拡大する需要、証明されたユースケース、認知された望ましさと組み合わさっているからだ」と、ターピン氏は指摘する。

ビットコインの供給量は、2100万で上限が設定されている。現在流通中のビットコインは、1800万〜1900万であり、残りのビットコインを作るのには、100年以上かかるとされている。このような希少性と、インフレや米ドルの価値の低下を組み合わせれば、価値が高まるのも当然だと、ターピン氏は主張する。

しかし、すべての希少性が平等に作られている訳ではない。イーサリアム(ETH)には、「ガス代(取引手数料)」の高さを相殺するためにトークンを焼却する機能など、希少性のための独自の仕組みが備わっている。

「イーサリアムはまた、現在のDeFi(分散型金融)とNFTエコシステムの大半を支えることでも知られており、独自の競争力を持っている。そのようなダイナミクスに匹敵する暗号資産は現在、ほとんどない」とタービン氏。

ミームコインと希少性

ビットコインが抱える十数年の実績をもとに、需要と供給の経済学のおかげで、投資家たちはデジタル通貨の価値の測り方をもう少しはっきりと理解できるようになってきた。時間と、流通するコインの数が大切な要素である。

コミュニティーもまた、コインの価値に大きな影響をもたらす。ミームコインは、暗号資産における集団での買いという要素を理解するにはぴったりの事例研究の素材となる。

ソーシャルメディアでのジョークやシャレが主導するミームコインは、暗号資産エコシステムに新しい情報をあふれさせる傾向がある。このような現象は、価値の予測可能性やパターンといったものを阻害してしまう可能性があるのだ。

「ドージコイン(DOGE)は供給量が無限だ」と、イーサリアムブロックチェーンで高品質のデジタル資産を処理する企業レンダー・ネットワーク(Render Network)のフィリップ・ガラ(Phillip Gara)氏は語る。

10月下旬に驚異的な値上がりを記録した柴犬コインもある。2020年の立ち上げ時には、合計で1000兆以上のSHIBトークンが作られた。10の15乗という莫大な数だ。そのSHIBの約半数は分散型取引所ユニスワップ(Uniswap)に預け入れられ、残りの半分はイーサリアムの創業者ヴィタリック・ブテリン氏に寄付された。

コインの供給量に加え、イーロン・マスク氏の10月初旬の柴犬のツイートが、値上がりに貢献したという憶測もあったが、ブロックチェーンの透明性のおかげで、SHIBの値上がりは大量のコインを購入・保有するいわゆる「くじら」によるものだと、突き止めることができた。

NFTと希少性の価値

さらに、NFTと呼ばれるデジタルで希少なブロックチェーンアートは、おそらく最も高いレベルでの希少性を持っており、そのために、独創的な値付け戦略を活用する機会も最も多い。

「(クリエーターは)ユニークで唯一のアートやエディションを生み出すことができる。一方で、ある価格であるNFTエディションを手にしたいすべての人が、そのNFTエディションを手にできるオープンエディションも可能だ」とガラ氏は説明し、「価格付けに関しては、多くのイノベーションを生み出せる」と指摘した。

ガラ氏によると、アーティストやクリエーターはトークンをリリースする時に、ダッチオークションと呼ばれる価格を引き下げる戦略を使うことができる。ダッチオークションでは、「経済的均衡」を生み出すために、トークンの価格は時間と共に下げられる。

「人々の価格感度に応じて、需要がマッチされるので、より多くの買い手が出る」と、ガラ氏は説明する。

しかし、NFTの価値は(アートと同様に)より主観的となる傾向がある。暗号資産の価値も投機的であるが、NFTに比べると、経済学の原理、財政政策、需要と供給にはるかに依存している。

理解しておくべきこと

大半の市場や経済エコシステムと同様、暗号資産の世界でも希少性が価値を高める。そのために、暗号資産の支持者はビットコインを、米ドルとは違って上限数の決まった「デジタルゴールド」とみなすのだ。

「デジタルゴールド」という言葉だけでも、人々は暗号資産をより詳しく知りたくなるだろう。しかし、あらゆる代替資産への投資同様、暗号資産をポートフォリオに追加する理由を、投資家は自ら理解する必要がある。

インフレヘッジとして使うつもりなら、その「ゴールド」を保管する場所を理解するために、コールドストレージやホステッドウォレットについて勉強しよう。定期的に清算したい場合には、適切な頻度(1年ごと、四半期ごと、毎月?)や、キャピタルゲイン課税はどうなっているか、手にした現金はどうするのかを検討しよう。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:Not All Cryptos Are Scarce Like Bitcoin