民間企業のデジタル通貨「DCJPY」、ホワイトペーパーを公開

国内のメガバンク3行やセブン銀行を含む74の企業で構成するデジタル通貨フォーラムが、ブロックチェーンを基盤技術とする円建てのデジタル通貨「DCJPY(仮称)」についてのホワイトペーパーをまとめた。

11月24日に公開されたホワイトペーパーによると、DCJPYは日本円に連動し、当面は民間銀行が発行主体となることを想定。民間銀行がDCJPYを債務として発行し、利用する企業と個人はデジタル通貨専用の口座(アカウント)で「預金」として保有することができる。

利用者は当面、国内ユーザーに限られ、利用エリアも日本国内を想定しているが、将来的には国外ユーザーを含めた国内外における利用の可能性を検討する。

二層構造デジタル通貨プラットフォーム

デジタル通貨フォーラムは、DCJPYの発行・送金・償却が行われる2つの領域を設定している。一つは「共通領域」で、DCJPYの残高を記録する元帳管理などの業務や、銀行がデジタル通貨を発行する際に他の銀行のシステムと連携するための仕組みを提供する領域。

2つ目は「付加領域」で、さまざまなニーズに応じたプログラムの書き込みを可能とする領域だ。DCJPYを、モノの流れとリンクさせた形で支払決済に用いることが可能になるという。モノやサービス、デジタル資産などの移転と連動したDCJPYの移転を、スマートコントラクトを使って実現することができるようになる。

ホワイトペーパーは、2種類の商取引とそれぞれの決済を、DCJPYがよりシンプルな流れにする想定ケースを提示している。電力の売買プラットフォームでは現在、発電者と需要家によるピアツーピア取引(個人間取引)が行われる一方、国内の大手金融機関は、株式や債券、不動産などの資産を裏付けとする「セキュリティトークン(ブロックチェーンを技術基盤にしたデジタル証券)」と呼ばれる次世代の金融証券の開発を進めている。

デジタル通貨フォーラムが構想しているプラットフォームでは、電力売買により入手したDCJPYを、セキュリティトークンの購入に利用することが可能になる。

デジタル通貨フォーラムの事務局を務め、民間企業によるデジタル通貨の開発を進めるディーカレット(DeCurret)は24日、オンライン記者会見で開催。同社社長補佐の相原寛史氏は、ブロックチェーンを基盤とするDCJPYを利用した決済手段は、今後、POC(概念実証)や実証実験が計画されており、現段階では従来の銀行振込による決済に比べて、どれだけのコスト削減につながるかは分からないとコメント。

民間デジタル通貨の導入により、将来的には24時間・365日ノンストップでの決済基盤が可能となるが、AML(マネーロンダリング防止)対策などに必要な確認作業を考えると、さらなる検討が必要になると述べた。

|テキスト・編集:佐藤茂
|トップイメージ画像:Shutterstock