感謝祭、テクノロジーに感謝しよう【オピニオン】

今年の感謝祭、私はテクノロジーとテクノロジーが私たちに自己変革と失敗から立ち直るための無限のチャンスを与えてくれることに感謝します。テクノロジーは私の家族と私自身に多くを与えてくれた。

世界に飛び出すチケット

私の曽祖父はアテネでチーズ店を経営していた。息子ジョージは工業学校に進んだが、それは彼にとってギリシャから世界に飛び出すためのチケットだった。ジョージの娘ローズマリー(私の母)は数学と工学に無限のチャンスを見出し、コンピューター・プログラマーやリサーチ・エグゼクティブとしてキャリアを積んだ。

父は核物理学者としてキャリアをスタートさせ、父と母はともにスタンフォード線形加速器研究所で働き、後にスイスにある欧州原子核研究機構(CERN)でも仕事をした。私の初めての仕事は、ナイジェリアでの同国初の民間携帯電話会社での1年だった。

私にとって、ブロックチェーンは優れたテクノロジー、あるいはキャリアを重ねる場所以上のものになっている。ブロックチェーンは、企業経営を変革し、莫大な価値を創造し、グローバル経済のパワーをリセットする機会を生み出す。

IT(情報技術)革命から50年が経過し、世界の経済活動の多くがデジタル化された。だが、そのほとんどは企業規模の小さなタコツボにとどまっている。

エコシステム全体の構造が変わる

世界の優良企業でさえ、売上高の5~10%を管理費に費やしている。管理費はそのほとんどが、デジタル化されているが、異なるシステムに存在するさまざまな種類のデータやビジネスルールを照合するという問題。この問題は世界をより良くするためのものではない。

ブロックチェーンは、企業を超えてシステムを結びつけることができる。そして企業同士の連携が簡単になれば、エコシステム全体の構造が変わる。小規模な企業のネットワークも大企業と同じように効率的に運営できるようになる。

これまで、デジタル・エコノミーは「勝者がすべてを得る(winner-take-all)」(あるいはそれに近い)ものであることが何度も証明されている。中央集権的な仲介者がデジタルネットワークから得られる利益のほとんどを手にする。だがそれがすべてではない。

パブリック・ブロックチェーンは、中央集権的システムと同じ特徴を持つ。つまり、ネットワーク効果によって、多くの人たちが参加すればするほど価値が高まる。両者の違い、そして私たちにとってのチャンスは、デジタル・トランスフォーメーションのメリットを中央集権的な運営者ではなく、ネットワークの参加者に還元できることだ。

過ちを修正するチャンス

新しいテクノロジーには、新しいアイデアや新しいプロダクトだけではなく、新しいビジネスの進め方、人々のマネジメント方法、そして人々のために新しいチャンスを生み出す余地がある。ITの黎明期を多くの女性やマイノリティが支えたことは偶然ではない。IT業界は優れた頭脳を必要とし、高い競争力を得るためには由来や経歴は無関係だった。

ときに理解できないように感じることもあるが、数学や工学の魅力はきわめてシンプル。数字が合っているかどうか、プログラムが正しく動くかどうか。優れたソフトウェア・エンジニアリングのスキルは人気投票ではない。尊敬を集めるのは、経歴ではなく、仕事。進歩は不均一で不完全だが、それでも前に進んでいる。

だがどこでも、古臭い考え方がついてまわる。私の母は70年代初頭にスイスで仕事をしていたとき、人事部から夫妻が同じ組織で働いている場合、妻の給料が夫よりも高いことは許されないので、あなたの給料をカットしなければならないと説明されたという逸話をよく語った。

新しいテクノロジーは、それらが生み出す誇大広告にはかなわない。テレビは教育を民主化しなかった。インターネットは分散型ネットワークだが、独占の新たな黄金時代の到来を告げた。力を奪われた人たちに力を与えるはずだったが、そうではなく、特権的で過激な人たちに力を与えてしまったようだ。

だが問題ない。新しいテクノロジーがもたらす、終わりのないイノベーションによって、私たちは過ちを修正し、物事をより良くするための新しいチャンスを得ることができる。感謝しよう。

ポール・ブローディ(Paul Brody)氏:EY(アーンスト・アンド・ヤング)のグローバル・ブロックチェーン・リーダー。
※見解は筆者個人のものであり、EYおよびその関連企業の見解を必ずしも反映するものではありません。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:感謝祭のパレード(Shutterstock)
|原文:This Thanksgiving, Let’s Be Grateful for Technology