プロ野球・セリーグの「横浜 DeNA ベイスターズ」が、NFTを活用したデジタルムービーの販売を開始した。今年9月にフォトコレクションを発売した埼玉西武ライオンズに続き、NFT事業に本格参入した国内の主要プロ野球チームでは2チーム目になる。
DeNAと横浜 DeNA ベイスターズは30日、ブロックチェーンを基盤技術にするNFTを活用したデジタルムービーコレクション「PLAYBACK 9」の提供をスタートさせた。
NFT(ノン・ファンジブル・トークン=非代替性トークン):ブロックチェーン上で発行される代替不可能なデジタルトークンで、アートやイラスト、写真、アニメ、ゲーム、動画などのコンテンツの固有性を証明することができる。NFTを利用した事業は世界的に拡大している。
PLAYBACK 9は、試合の名シーンなどをデジタルアイテムとして販売し、従来のトレーディングカードをデジタル上で体験できるサービス。DeNAは今後、球団公式のデジタルコレクションとして、ユーザー間でNFTのオンライン売買を可能にする計画だ。
PLAYBACK 9は、LINEが独自に開発したブロックチェーン「LINE Blockchain」を採用しており、デジタルアイテムは同ブロックチェーン上で発行される。NFTの購入や取引には通常、デジタルウォレットを利用する必要がある。LINEは、国内で約8900万人が利用するスマートフォンアプリ「LINE」の中で、簡単に利用できるウォレット「LINE BITMAX Wallet」を開発している。
今年、北米や欧州、東南アジアなどで急成長してきたNFTビジネス。日本でもビッグテック企業が、NFTを発行・取引できるプラットフォームの運営を開始し、音楽家やアイドル、YouTuber、アニメやゲームなどのIP(知的財産)ホルダーがNFTの活用を続々と始めている。
ニューヨークでは今月、NFTをテーマにしたイベント「NFT.NYC」が開催され、5000枚を超える入場チケットが販売された。マンハッタンの中心地タイムズスクエアには、NFTをテーマにした15の広告が掲載され、至るところでパーティやダンスイベントが開かれた。
スポーツエンターテインメントの領域で、成功を収めたNFT事業として今年注目されてきたのは「NBA Top Shot」で、全米プロバスケットボール(NBA)選手のデジタル・トレーディングカード(NFT)を、ブロックチェーン上で取り扱うプラットフォームとして、カナダのDapper Labs社が開発した。NBA Top Shotでは、ユーザーは、「モーメント(Moment)」と呼ばれる15秒程度のNBA選手のハイライト動画が複数入ったパッケージを購入、取引することができる。
プロスポーツチームの収益は、試合のチケット販売収入、放映権収入、広告料収入、物品販売などで構成されている。新型コロナウイルスのパンデミックは、スタジアムの観戦者数を減少させ、収益源の柱の一つであるチケット販売収入に打撃を与えた。
デジタルフォトやデジタルムービーなどのNFT販売は、プロスポーツチームにとっては新たな収益源となる一方、デジタルアイテムを購入したり、取引することで、応援するファンにとっては、スポーツエンターテインメントの新たな楽しみ方となっている。
|テキスト・編集:佐藤茂
|トップ画像:DeNA提供