メタバース(仮想空間)に強い興味を示しているのはフェイスブック(現メタ)だけではない。スポーツ用品大手のアディダスから、カリブ海の島国バルバドスの外務省まで、さまざまな人や組織がメタバースに関心を示している。
そしてメタバースは暗号資産(仮想通貨)の世界にも侵入している。
メタバースの計り知れない可能性に対する期待から、メタバース「ザ・サンドボックス」の暗号資産ザ・サンドボックス(SAND)や「ディセントラランド」の暗号資産ディセントラランド(MANA)など、いわゆる「メタバース・トークン」は11月、暗号資産トレーダーやウォール街からの関心を集め、史上最高値を更新した。
アディダス、バルバドス大使館
メタバースは、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)、インターネット、ゲーム、アート、カルチャー、ソーシャル・ネットワーキングなどの要素を組み合わせたデジタルワールド。メタバースに参加するには通常、ユーザーは暗号資産を使うか、メタバース内のモノを購入する必要がある。メタバース内のモノは通常、ノンファンジブル・トークン(NFT)の形で取引されている。
上昇はフェイスブックが10月、メタ(Meta)に社名変更し、メタバースに注力すると発表したことがきっかけとなった。発表はさまざまな企業、不動産投資家、VC、さらには国家の関心を呼び起こし、メタバースへの参入が相次いでいる。
メタバース「ザ・サンドボックス」のネイティブ暗号資産ザ・サンドボックス(SAND)は11月、1.55ドルから6.79ドルへと約350%上昇した。
スポーツ用品大手アディダスがザ・サンドボックス内に「adiVerse」を構築するとツイートしたことで、ザ・サンドボックス(SAND)は急上昇した。
adiVerse anyone? 🤔
— adidas Originals (@adidasoriginals) November 22, 2021
What should we build, together in @TheSandboxGame? ⬇️ https://t.co/VbAdIi9cxN
競合するメタバース「ディセントラランド」の暗号資産ディセントラランド(MANA)はデータ提供会社メッサーリ(Messari)によると11月、2.81ドルから4.67ドルへと約66%上昇した。
ディセントラランドは東カリブ海の島国バルバドスがバーチャル大使館を開設すると発表したことで、外交とデジタル不動産をつなぐとして話題になった。
CoinGeckoのデータによると12月2日朝時点で、ディセントラランド(MANA)とザ・サンドボックス(SAND)は時価総額が40位、41位の暗号資産となっている。
暗号資産トレーダーやウォール街のアナリストまでもがメタバースの潜在価値を見極めようとしており、一部の業界関係者はデジタルおよび対面での双方の体験に革命的な変化を生み出すと述べている。
市場規模は1兆ドル
メタバースは「我々が他者と交流したり、音楽の演奏を聴いたり、ファッションブランドと交流したり、NFTやゲーム内スキンのようなデジタル資産を学習あるいは投機する際のメディアを根本的に変える可能性がある」と米投資銀行モルガン・スタンレーは11月11日に発表したレポートで述べている。
暗号資産投資大手のグレイスケール(Grayscale)は、メタバースは年間収益が1兆ドル(約115兆円)を超える市場規模になる可能性があるとしている。
またバンク・オブ・アメリカがブルームバーグ・インテリジェンス(Bloomberg Intelligence)を引用して発表したレポートによると、メタバースは2024年までに8000億ドルの市場規模となる可能性があるという。
最終的な勝者は?
どのメタバースが最終的に勝利を収めるのかはまだわからない。そのため、さまざまなメタバースの暗号資産を広く購入している投資家も存在する。
Somnium Space(CUBE)はこの1カ月で約66%上昇。Loopring(LRC)はビデオゲーム小売店ゲームストップ(GameStop)との提携の噂が広がったことで189%上昇した。
そのほか、Illuvium(ILV)は84%、アートに特化したWilder World(WILD)は67%上昇している。
「複数の人気メタバースがあり、Metaverse GroupはそのうちのいくつかにNFTベースの土地を所有している」とTokens.comの共同創業者兼CEO、アンドリュー・キゲル(Andrew Kiguel)氏は語った。Metaverse GroupはTokens.comの子会社で、メタバースの土地に特化した不動産投資会社であり、史上初のメタバース不動産投資信託を運用している。
同グループは先週、ディセントラランドの土地を61万8000ディセントラランド(MANA)で購入。これは先週時点では約320万ドル(約3億7000万円)に相当し、メタバースの土地取得としては過去最大の金額となった。
The @dcllandbot having fried its circuits, we’re pleased to officially announce the largest metaverse land purchase ever! Congrats to @tokens_com and @Metaverse_Group for securing a 116 parcel estate in the DCL fashion precinct. And if you’re in the fashion industry – get ready! pic.twitter.com/IGyb4nbZQW
— Decentraland (@decentraland) November 23, 2021
「当社の投資リターンは、保有する土地の評価、そしてまた土地を開発し、メタバースでのプレゼンスを確立したいと考えている人たちに貸し出す能力に基づいている」(キゲル氏)
メタバースはまだ初期段階で状況は断片的だが、投資家はアディダスやバルバドスの事例に続く、多くの機関投資家が現れることを期待している。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:ディセントラランド内の商業エリア(Republic Realm)
|原文:SAND, MANA Tokens Surged in November as Crypto Traders Bet on ‘Metaverse’ Potential