野村が不動産クラウドファンディングでブロックチェーン活用へ

野村ホールディングス(HD)の子会社で、ブロックチェーンをデジタルトークンの発行・取引プラットフォームを開発するBOOSTRYが、クラウドファンディングにブロックチェーンをかけ合わせる取り組みを始める。

国内の不動産クラウドファンディングに二次流通市場(セカンダリー市場)を築くことで、小口化と流動性を促し、市場全体の規模拡大につなげる方針だ。

BOOSTRYは、不動産投資型クラウドファンディングサービスの基盤を開発するRelicと提携し、投資家が投資物件の小口証券をプラットフォーム上で売買できるセカンダリー市場の創設を進める。BOOSTRYが開発したブロックチェーン・プラットフォームの「ibet」を活用する。BOOSTRY とRelicが共同で、12月16日に発表した。

(BOOSTRYとRelic共同発表リリースより)

一般的なREITと異なり、不動産投資型クラウドファンディングは投資物件の個別選定が可能になる。ただ、ファンド商品の運用期間が1~2年と短く、満期が来るまで現金化することが困難で、流動性が低いという課題があった。今回の取り組みが実現すれば、投資家は満期を待たずに流通市場で売買することが可能になる。

REIT:不動産投資信託(REIT:Real Estate Investment Trust)のことで、不動産を中心に運用する金融商品。その多くは金融商品取引所に上場しており、株式と同じように取引所において売買が可能。投資家から集めた資金で不動産投資の専門家がオフィスやマンションなどの不動産を購入し、購入した不動産を賃貸し、その賃料収入や売却益から費用を差し引いた残りの収益を投資家に分配します。(野村証券より)

BOOSTRYの佐々木俊典社長は「不動産投資型クラウドファンディングでは、配当目的の投資がほとんどであったが、セカンダリー市場を築くことで、投資家は売買によるリターンを追求することができるようになる」と述べる。

米キックスターターもチェーンに移行

クラウドファンディングサービスにブロックチェーンをかけ合わせる動きを巡っては、米クラファン大手のキックスターター(Kickstarter)が今月に似た取り組みを発表している。

セロ(Celo)ブロックチェーン上に新たなプラットフォームを構築し、協力者や貢献者だけでなく競合他社も利用可能なものにする。2022年第1四半期(1−3月期)に開発を始め、準備が整い次第、既存ウェブサイトを新システムに切り替える予定だという。

BOOSTRYは、野村HDと野村総合研究所(NRI)が共同で立ち上げた開発会社。セキュリティトークン(ST)を取り扱うために必要な機能を包括的に提供している。昨年末、デジタル資産に関する取り組みを強化するSBIホールディングスも資本参画しており、 10%を保有している。

|取材・テキスト:菊池友信、佐藤茂
|編集:佐藤茂
|写真:多田圭佑