シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のビットコイン先物は「バックワーデーション(backwardation)=逆ざや」に陥った。この状況は暗号資産(仮想通貨)に対する機関投資家の需要が低下していることを示している。
バックワーデーション:商品先物取引などで、決済期限が最も近い期近物が期先物にくらべて高い状態のこと。限月間の価格差を利用した取引では、逆鞘(ぎゃくざや)のことである。バックワーデーションの逆はコンタンゴ(Contango)と呼ぶ。
スキュー(Skew)のデータを見ると、12月13日に先物価格がスポット価格よりも低くなるバックワーデーションが出現、1カ月先物は年率換算で14%近い割引率となり、少なくとも2020年半ば以降で最も大きく下落した。
3カ月先物は、ビットコインが6%以上下落して4万5700ドルとなったため、3%の割引率となった。
機関投資家はビットコインへの投資に、規制当局の認可を受けたCME先物を利用することが多い。プロシェアーズ(ProShares)のビットコイン先物ETF(上場投資信託)や、ヴァルキリー・インベストメント(Valkyrie Investments)の席ものETFもCMEのビットコイン先物に投資している。
CME先物が割安になっていることは、機関投資家などの需要が弱いことを表していると米銀大手のJPモルガン・チェースが5月に指摘している。当時、ビットコインは5万8000ドルから3万ドルまで下落した。
今回のバックワーデーションは、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」への懸念や米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが迫っていることで、市場センチメントが弱気になっていることを示しているだろう。さらに年末に向けて市場参加者が投資リスクを減らしている可能性もある。
原油や豚肉のような物理的な品物に基づく先物では、生産工程を維持するために一刻でも早く品物を確保したいというインセンティブが働き、バックワーディングが発生。現物(スポット)価格が先物価格よりも高くなることがある。
CMEのビットコイン先物は現金決済であり、決済日にビットコインが移動することはない。そのうえ、ビットコインは石油や豚肉のような物理的な商品ではなく、まだ主に投機的資産と考えられている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Skew
|原文:Bitcoin CME Futures Slip Into ‘Backwardation’ as Bearish Sentiment Grips Market