複数の米下院議員が現地時間6月27日、金融犯罪取締ネットワーク(Financial Crime Enforcement Network:FinCEN)のディレクター、ケネス・ブランコ(Kenneth Blanco)氏に、フェイスブックが計画している仮想通貨について質問した。
議員らは下院金融サービス委員会のメンバーと会議を行い、フェイスブックのリブラ(Libra)プロジェクトについて、財務省のマネーロンダリング対策組織「FinCEN」を率いるブランコ氏と議論を行った。
会議は、機械学習と人工知能(AI)を使って、違法なマネーロンダリングと関連する犯罪行為を防ぐことができるかどうかを幅広く検討する一環として行われた。
プレスリリースによると、会議に参加したエマニュエル・クリーバー下院議員の懸念は、ここ数年、フェイスブックがユーザーデータを不適切に保存したこと、誤った情報を広めていることにあるようだ。
「我々は、海外の敵対勢力や悪意を持った人たちがフェイスブックを通して、我々の民主主義に大きなダメージを与えたことを目撃してきた。それらは単なるメッセージや広告だった」と同氏はリリースで述べ、さらに以下のように付け加えた。
「そのような巨大企業が巨額の金融取引を行うことを許す以前に、我々は、こうした問題を研究し、テロリスト、過激派、あるいは敵勢力が我が国に害を加えるためにこうしたプラットフォームを使うことを阻止するためのツールやガードレールを備えていることを確認しなければならない」
「非道な者たち」
リリースでは、ブロンコ氏のリブラに対する見解や、FinCENがリブラを監督するのかどうか、あるいはその方法などは明らかになっていない。だがクリーバー議員の疑問は、リブラとカリブラ(Calibra) に焦点を当てたものにほかならない。カリブラはリブラを使うためのデジタルウォレットや他のサービスの開発を行うフェイスブックの子会社だ。
カリブラは2019年はじめに、FinCENに金融サービス業として登録した。
「非道な者たち」が違法な金融行為を行うための新たな手段を見つけ出しており、彼らは仮想通貨やマーケットプレイスをそのためのツールとして使うことができるとクリーバー議員はリリースであからさまに述べた。
「今、フェイスブックのような巨大企業 ── 彼らはすでにそうした非道な者たちを許容できるレベルで特定し、妨害することはできないことを示している ── が、リブラという独自の仮想通貨を作っていることを考えると、金融システムが不適切に使われていないことを確認するために、議会や金融当局が最新かつ強力なテクノロジーを積極的に使用することの重要性を軽視することはできない」
さらに同氏は会議の参加者たちは、金融システムの誤った使い方を防ぐための措置について、「実りある議論を行った」と続けた。
党派を超えた批判
27日の会議は、フェイスブックの仮想通貨計画に対する党派を超えた幅広い批判の中で行われた。
下院金融サービス委員会は7月にリブラの公聴会を予定している。その前日には、上院銀行委員会の公聴会が行われる。
世界中の規制当局もリブラの調査を進めている。G7はその影響を調査するためのタスクフォースの設立を発表した。
クリーバー議員は早くから仮想通貨を使った違法行為の可能性に懸念を示してきた。リリースによると、同氏はビットコイン財団とデジタルコマース協議会(Chamber of Digital Commerce)に対して、過激派グループが仮想通貨を使うことを防ぐ方法を確立するよう求めている。
また同氏は、ロシアの情報機関が2016年の大統領選の妨害活動にビットコインを使って資金を提供したことをロバート・モラー特別検察官が明らかにしたことを受け、この件についてFinCENに調査を行うよう求めている。
翻訳:Masaru Yamazaki
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Image via Shutterstock
原文:US Lawmakers Question Terrorist Use of Facebook Cryptocurrency